人生の逆算 喜太郎
若い頃
あの頃
今を生きていた
懐かしいなんて
思う事はなかった
ただ薄っぺらくて
捲るページも無くて
書き進める事で精一杯
それがあの頃
それが若い頃
そう懐かしむ今
捲るページも増えだけど
最初の方は掠れて破けて
読み返せないところもあって
それでも懐かしいと感じる
そんな中で始まる思いと不安が
人生の逆算をさせる
いつからだろう
思い通りにならない身体のせい?
増えてゆく薬の数
『あと何年だろう』
人生を逆算し始めるこの頃
将来は遠く先の話だったあの頃
それは未知なる経験の足し算ばかりだった
経験が溜まれば溜まるほど
慣れたり手を抜いたり
後悔を覚えた時には手遅れに気付いて
足掻いたりもがいたりしながらも
不安で逆算を始める
後何十年 後何年………
それでもできる事が限られているなら
それを精一杯にやれば良いと言い聞かす
自分のタイムリミットなら
自分なりに進めていけば良い
それは諦めに似ているが
新たな今しかできない足し算なのかもしれない
懐かしさとたくさんの思い出と笑顔と後悔
これからは何を思い感じる?
残された時間の中での不安?未知なる足し算
あの頃に戻ったみたいだ
若い頃に戻ったみたいだ
書き足してゆく事で精一杯になれるかな