夜明けの狭間 ゆづは
猛獣たちの咆哮が
響き渡る
その音は幾重にも重なり
嵐のように
部屋を揺るがす
けれど、不思議と恐れは湧かない
唇に人差し指を当て
シー、と
独り言のように囁く
駄々をこねる子を
そっとなだめるように
やがて
扉の向こうへと
声は遠のき
隙間からこぼれ出るのは
湿った森の残響
ひとしきり震える闇の中で
無防備な背後から
爪を隠した
しなやかな足音が忍び寄る
足元に寄り添うその温もりは
言葉を持たず
ただ息をひそめ
丸く横たわる
朝の淡い光に
瞳を細めながら
目を開ければ
冷たい空気が肌を撫で
仄かな温もりは消え去り
夢の世界は
ひっそりと閉じられる
けれど、次の瞬間
鼓膜を震わす獰猛な声が蘇る
私はまだ
夜明けの狭間で
夢の続きを見ているのだろうか──
それとも
目覚めたことすら
夢だったのか