終わらない世界 相野零次
世界は誰のために
どこにある?
僕のためじゃないことは確かだ
なら君のため?
僕も君も知らない誰かのため?
憶測が憶測を呼んで
ほとんどちっぽけなかけらに
成り果てて
それでも
愛しかない
恋じゃない
と言い続ける人に
世界は少しだけ
その姿を見せるらしい
世界とはそもそも何か?
愛や恋や夢や希望や甘いクリームパン
絶望に殺された死神の晩餐会
明るいと暗いが同時進行
パパとママが手を振っている
遊園地に日曜日の公園
砂場には不発弾が埋まっている
そんな金曜日(さっきは日曜日)
見たまえ!
いずれこんな日が来ることを
神様は予見していた
だから私はここまでやってきた
君たちが指をくわえて待っているあいだ
私はじっと力を蓄え
まぶたを閉じて
閉じたまぶたに感じる光を頼りに
暗闇の洞窟を抜けて
竜が天翔ける天の月を背に
地球を心に抱いて
太陽に笑みを絶やさずに
ここまで! ここまできたのだ
「世界の覚醒はもうすぐだ!」
そうみんなが一斉に叫んだとき
全てのスピードが最高潮に達し
カップヌードルが出来上がる三分に達し
ウルトラマンが人間に戻る三分に達し
三分 三分 三分
そうキーワードは三分だ
世界は三分で出来上がり
宇宙を回し続けるんだ
探偵はそう推理した
それだけで世界は
恥ずかしそうに微笑んだ
世界がやってきた
僕を連れて君を乗せて
世界は去っていく
新たなステージ目指して
指をくわえた赤子を交えて
杖をついた老婆を抱えて
ダンスを踊る若者たちを叱咤激励して
何者でもない誰かにヒントマークを送って
我々は行く
どこまででも
光る海の中へと
星一つない闇夜へと
マグマがたぎる噴火口へと
オーロラが輝く宇宙へと
どこまででも
繰り返し繰り返し繰り返される
十年後百年後一万年後
我々はまた世界を知るだろう
そのときまた新たなステージを迎えるだろう
これは予言じゃない事実だ
絶対的な正義だ
空から天が落ちてくる
我々はそれを受け止めるために
ここにいる
あそこにもいる
どこにでもいる
あ、今 一瞬君がまばたきした
その中にもいる
それが世界だ
君は世界を目撃した
そう裁判官の前で証言するんだ
それだけで君は首を吊られることはない
銃殺刑にもならない
君は許されるだろう
忘れるな 人よ
世界の偉大さを
世界の恐ろしさを
世界の美しさを
まだ世界は終らない
終わらない世界の前では
誰もが無謀だ
深淵を前に背を向けよ
世界は予言だ
明日全てが無に返っても
世界は有言実行だ
僕はふと我に返った
長い夢を見ていたようだ
その夢の途中で
僕はキーボードを叩いている
僕は背中に世界からの視線を感じた