9月 6日(火)~ 9月 8日(木) ご投稿分、評と感想です。 (青島江里)
◎9月 6日(火)~ 9月 8日(木) ご投稿分、評と感想です。
☆夜蝉 小林大鬼さん
今年の夏は本当に暑かったですね。しかも未だに暑さは続いていますね。
このような炎暑とも酷暑ともいわれるような中でも、蝉は生まれて鳴き声を響かせていますね。
お住まいの地域では、日が暮れても蝉の鳴き声が響いていたのですね。
四連目の命を絶やさないために命を削っているととらえているところ。自然界の大きさや、生
きていくということについての大変さを感じさせてくれました。
五連目から七連目。
蝉よ
眠れない蝉よ
機械的な
耳障りな音で
これでは俺も眠れない
こちらは、メインになる連だと思います。昼だけではなく、日が暮れても鳴くことをやめよう
としない蝉。炎暑が続き、自らの命の短さをより強く感じているだろう蝉に向けての「これで
は俺も眠れない」という言葉。こちらは、単にうるさくて眠れないという意味ではなくて、蝉
に対する思いやりの言葉であるように思いました。
本能とはいえ、もっと自分のために鳴いてもいいではないか。そんなに生き急ぐように鳴くな
よ・・・・・・という悲哀を表現されているようにも思えました。
気になったところは、ひとつだけ。六連目の「機械的な/耳障りな音で」の「機械的な」の部分。
「~的」でひとくくりにしてしまうのは、ちょっともったいない気がしました。{~的」の閉
じられた部分を、思い切って作者さんの言葉で開放してあげることで、もっと広くこの作品の
味わいを広げることができるような気がします。
作品は、とても短い、限られた時間の中に生きる、小さな生き物に対する愛情を感じさせてくれ
る作品になっていると思いました。今回は佳作一歩手前で。
☆廃線跡 妻咲邦香さん
ずっと昔。鉄道の主流が電気で走るものではなかった頃、蒸気機関車は日本各地でみかける
ことができたのでしょうね。現在の町の風景の中に、自分だけの列車を走らせること。それ
は、空を見て、自由に雲に思いをはせるような気持ちにも似ているような気がしました。
二連目以降は、読み手の味わい方の道筋が分かれていくと思いました。ひとつは、「私」が
想像しているうちに、さらに深みにはまって、夢の中を夢の中ではないと信じこんでしまう
パターン。もう一つは、夢の中ではなく、この世の中では存在しない異次元の世界に迷い込
んでしまうパターン。どちらをとっても、「UFOを見た」というような感じで、現実の世界に
ありそうなお話になるので、違和感はないと思いました。
夢かそうでないのかという不思議な体験をされたあとに浮かび上がってくる気持ち。六連目
の「ある筈のない路線」・・・こちらの方から、タイトルの「廃線跡」の意味合いの輪郭が
みえてきました。路線を辿った想像の後を「廃線跡」とされているのでしたら、これ、すご
い発想力だなぁって思ってしまい、腕を組んで目をまるまるさせている自分に気づいてしま
いました。
そんなことを言っていますが、ここに辿り着くまでに、私は路頭に迷っていました。場合に
よっては、大きな落し穴になるうるかもしれません。というのも、一番初めに拝見させてい
ただいた時、タイトルの「廃線跡」から入ってしまったからです。実際の廃線跡を訪れてそ
の場所を思うという詩なのかという風に入ってしまったのです。次元軸?時間軸?というも
ののつじつまが合わないので、四苦八苦するという失態を犯してしまったのです(汗)もし
かしたら、私以外にもこのようなパターンは起こりうるかもしれません。タイトルを作中に
取り込み、他のタイトルにするのも一手ですが、もったいない気もするし・・・。一応レポ
ートだけして、あとは作品の保護者であります作者さんにゆだねます。それからもう一つ、
作品全体に「私」という言葉が多いのような気がするので、整理されてもいいかなと思いま
した。
全体的には、静けさに包まれる作品。その静けさのひとつひとつに微妙な違いがあるのです
が、その時々を、言葉を選びながら丁寧に表現されている点もこの作品の大きな魅力だと感
じました。今回は佳作半歩手前で。
☆かみひこうき じじいじじいさん
かみひこうきで遊ぶのは、楽しいですね!大人と子供が一緒に遊んでも、どちらも同じように
楽しめる遊びだと思います。
思ったことを飾ることなく、きれいそのままに書き綴られていると思いました。それはとても
大切なことのひとつであると思うのですが、今回の作品は、たくさんたくさん思ったことを書
き込みすぎてしまっているように思えました。魅力的だったことをたくさん書くのは、楽しい
ですが、余りたくさん書き込んでしまうと、ひとつひとつの魅力が薄れてしまって、もったい
ない気がするのです。
そこで、今回の作品について、私のおすすめは、「テーマをしぼる」ということです。
それが、どうすれば伝わるのか、無い知恵を絞りつつ考えてみました。
まずは、じじいじじいさんの今回の作品のしろいかみひこうきの設定を、とんぼという言葉に
置き変えて読んでみてください。
そのあとで、私の好きな童謡のひとつなのですが、ネットで「とんぼのめがね」歌詞にアクセ
スし、今度は、とんぼのめがねをしろいかみひこうきに変えて読んでみてください。たとえば、
「とんぼのめがねは みずいろめがね」→「しろいかみひこうきは みずいろかみひこうき」
のような感じで読んでみてください。
「とんぼのめがね」はとんぼの飛んでいる姿に魅かれる様子を表現されているのですが、「目
に映るもの」だけに焦点をあてて想像されていますよね。目に映る姿から、きれいな風景も見
えてきて、とっても魅力的だと思いませんか。じじいじじいさんの「しろいかみひこうき」を
重ねてみた時、短い詩の中にいろんな世界を感じませんでしたか。すごいですよね!焦点をし
ぼって書くと、同じ空を飛ぶという内容でも全然雰囲気が違ってきますよね。面白いですね。
情報提供をしている私ではありますが、こんな風に完ぺきに書くことはできません。でも、意
識することは可能だと思うのです。じじいじじいさんの今後の何かのご参考になればうれしい
です。今回は佳作二歩手前で。
☆竹藪 Osadaさん
夜明け前に鬱蒼と茂った竹藪の坂道を登っていくなんて、なんだか怖いなぁ~、と思いながら
拝見していたら、いつのまにか鉄橋の上?その時初めて、ああ、そうか。夢の中の世界なんだ
と肩をなでおろしました。夢から入って現実に帰るという設定にされたことで、夢の内容が、
説明っぽくならずにすんだと思います。夢から覚めた後の小さい頃の私からの小学生、大人
の私。こちらも整えられた時系列のおかげで、迷うことなく、どういう理由があって、この夢
のことが気になってしまうのか読むことができました。
この作品のテーマが面白かったです。「夢の続き」っていう言葉は、私のなかでは、歌や物語
の世界と結びつくことが多いワードだったので、実際に見た夢の続きを、現実の世界で思い、
それを追求しながら詩に書いてみるって、ありそうで、なかなかないように思えたからです。
印象の強い夢を見て、ずっと覚えているっていうテーマは、たくさんあると思いますが。
さやさやの部分は、音だけでなく、視覚的なものも、文字で表現してくれようとしたのですね。
最終連は、このままでも特に大丈夫だと思いますが、個人的にはもう少しおさまりやすくする
ことができるように思えました。私ならこんな感じにするかな。微妙なところですが。
道路の造成工事で
随分小ざっぱりした姿になった
竹藪は今も郷里の島で揺れている
二連目の風に揺れている姿と時間の流れをつなぎたくて、「揺れる」を使ってみました。
幼少期の一つの記憶から大人になった時間まで、とても大きな時間の流れを扱っているのに、
説明的な表現に頼らず、うまく時間の流れと、その時々の出来事をまとめ、表現されていると
思いました。ありそうでないテーマで、読み手を話の世界に引き込み、読ませてくれる作品だと
思いました。佳作を。
☆夢列車 暗沢さん
なんて言っていいのか。独特な空気感。それも、他の人がなかなか真似のできないような空気感。
「八十(やそ)でもみすゞでも」という表現を用いることによってできた、現在地。この現在地から
どこか知らない遠くへ吸い込まれていうような感覚に陥り。
眠りという言葉を使わずに表した「切符が有るのは 瞼の裏です/ああ そう目をきつく瞑らずに」
は、目を閉じて眠ってしまうというよりかは、目を閉じて見えてくるものがあることを感じさせて
くれました。言葉でというより、感覚で伝えてくれているようにも思えました。
「あとは もう容易です」 場面転換で使われたこの表現。とってつけた感もなく、強引さも感じ
させず、空気をかえることなく、とても自然です。天の川を描いた連は、夜空の様子だけではなく、
通過する速さも感じさせてくれました。
非常に幻想的な世界。リアルから夢への誘導や境目も、「いつのまにか」という流れになっている
と感じました。最終連に書かれた「荷列車や 貫通扉へ押し込まれても 苦情は受け付けかねます
よ」は、意外な展開。くすっと笑ってしまいました。
いつの間にか夢の中に吸い込まれていくような流れと、誰かにゆっくりと語りかける口調で、まと
められた静けさも魅力的です。秀作を。
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もう九月だというのに、まだまだ夏の暑さが残りますね。このような中でも、詩作に集中し、意欲
的に投稿されているみなさま。読み手に一旦、味わい方をゆだね、本人と違う読み方をしても、こ
ういう読みをする人もあるんだと、受け取り方を広げるその向上心の深さと豊かさには、脱帽いた
します。
毎回、みじかな方に手紙を書くような気持ちで感想をお届けしたいと思っています。わたしがお伝
えしたことは、どうぞお気軽に、ご自身が参考にしたいと思ったことだけ参考にしてください。投
稿者さんの充実した詩生活の何かの足しになればさいわいです。よろしくお願いいたします。
みなさま、今日も一日おつかれさまでした。