ランナーズハイ 喜太郎
痛い 肺が痛い
苦しい 息苦しい
痛い 足が重く痛い
もう倒れそうだ
もう死にそうだ
身体が揺れる
足も手も頭もフラフラと
もう走れない……
『走れ!生きてるぞ!』
生きてる!
生きている!
しっかりと息をしろ!
もう一歩前に足を出せ!
もっと大きく早く手を振れ!
もっと息を
もっと足を
もっと手を
生きている!俺は生きているじゃないか!
息をしろ!
足をもっと前に!
手をもっと早く!
倒れない!倒れない!
しっかりしろ!
吼えろっ!
走れえええええええっ!
前に!前に!前に!
手を早く振って
足を前に大きく出して
高く!高く!飛べっ!飛べっ!
答えなんか
答えなんか後でいい
今を
今を生きろ!走れ!
答えはついてくるんだ!
あっ………気持ち良い
まるで地上5センチ上を走っているみたいだ
視界は真っ白 唯一見えるのは先の一点だけ
不思議だ苦しくもない
足も軽い気がする前に出せる
手を大きく振れる気がする
飛んでいるんだ!
ああ見える 見える 見えるよ
近づく 近づいてくる
見えるぞ
胸を晴れっ!
答えを掴み取れ!
アスファルトが冷たい
微かに何かが聞こえた気がする
歓声か?分からない
ただ溢れ出る涙だけが温かくて確かだ
嗚咽も追いつかない荒い呼吸
全身に鳥肌が浮き立っている 震えてる
俺 走れたのか?
走れたんだ
こんな感覚を知ってしまったら
また走らずにはいられない気がする
そんな事を思ってる
答えなんか正解だろうが何でもいい
今はすごく心地良い疲れなんだ
きっと正解かどうかなんて
思い出話で分かるんだよきっと