色彩の環 Ema
日が落ちたところに
琥珀色の溜り
青から藍に移ろいゆく
空の中ほど
冬浅し
黄昏時
あざやかな夕陽が
去り際に そっと
いちばん遠い空に
描いていった
ビーナスベルト
薄黄色
薄紅色
薄紫色
淡い色が重なる
東の地平線
柔らかなグラデーションが
残照の橙色に手を伸ばして
くるり
穹窿の縁を
綾なす色彩
束の間
日常は
現実と幻想の
狭間を揺蕩う
ほどなく
東の空からほどけはじめて
藍にとけてゆく 色彩の環(わ)
街並みは
徐々に凹凸をなくして
墨ベタの街に 点々と
人灯りが散りばめられる
最後に残った
西の空の薄明かりに
つややかで透きとおった
黄金糖を思う
目を瞑って
手元にない鼈甲飴を
ひと粒ふくんでみる
懐かしさを
丁寧に溶かして
素朴な甘みが
なくなった頃
深い藍の空に
冴ゆる星々が
冬の星座を描いて
夜の帳に包まれた