夕暮れの色 人と庸
一日の夕暮れどきに
一年の夕暮れの中をゆく
なにも変わらないと思っていたのに
絶えず変化していた
表面でも 奥底でも
何もかもにおいて
この木は今まさに
青葉から紅葉へと変化しようとしている
その奥の家には誰も住んでいないようだ
家の一生に
夕暮れが訪れる
夕暮れの色は
知らぬ間に変化して
それとわかった頃に気づくのは
美(かな)しさと せわしなさ
今この瞬間も 絶えず
誰かが誰かに問うている
(あなたからあなたへと変化する、
その動機はなんですか。)
夕暮れの中で
こたえるものは誰もない
赤くて小さな葉っぱがひとひら
鼻の頭に乗っかった
痛みとともに現れたそれに
気づくものは誰もない
問い 問われを繰り返すうちに
表面も 奥底も
すっかりと変化を遂げてしまった
鼻の頭の紅葉も
いつの間にかいってしまった
誰にも気づかれないままに
水が蒸発するように
美しい色を振り落とした枝々は
削りとられたかのようなか細さでなお
花芽をいっぱいに湛えている
次の一年をゆくために
せわしなく