風船 上原有栖
吹く風に流されて
赤い風船は何処へゆくの
丸み帯びたシルエットが
ひつじ雲の浮かぶ青空に映え
伸びる紐の揺れる端には
白い小さな紙片を添えて
舞う風に踊って
赤い風船は想いを乗せる
大空を上へ下へ
どこまでも弾んでゆくの
ずっと先の未だ見ぬ街へ
目的地は決まっていない
このまま飛んで 飛んでゆきなさい
揺れる風に導かれて
赤い風船は辿り着くの
街のなかでもいい
山のふもとでもいい
海のうえであってもいい
でも願わくば
運良く誰かの腕が掴んではくれまいか
ひとつの願いが叶うまで
赤い風船は飛んでゆく
もうすぐ
ここからは見えなくなる
それでも ずうっと飛んでゆけ
目を細めて風船を見送った
小さな点になるまで想いを馳せて
赤い風船が落ちたとき
それはきっと
ひとつの願いが叶う頃
赤い風船が落ちた場所
そこにきっと
大事な想いは伝わるさ