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スレッドNo.667

感想と評 9/9~9/12 ご投稿分  三浦志郎  9/16

1 おおたにあかりさん 「れん、れん、れん」 9/9

僕はSNSを使わないので、、もしかしたら、この詩の気分が今一つ掴めないのかもしれません。
まあ、早い話が、詩集タイトルのことですよね? どうして、この言葉が出て来たのか?まあ、あまり深くこだわらず、フィーリング一発で出て来たような気がしてます。確かに「らん×3」や「りん×3」よりは、ありきたりではなく、ちょっと“ひねり”はありそうです。「連」もイメージにあったと思われます。苦吟ではなく、楽しく詩が書かれたようです。そんな軽快感、爽快感は感じました。これらはおおたにさんが常に詩に吹き込むところのものです。けれど、作品の真意がどの辺にあるか半信半疑だったので、今回は評価はパスさせてください。


2 北目気球さん 「立ち止まりのわがままに」 9/10

申し訳ないですが、解釈はわかりませんでした。最後のセリフに代表されるこの詩の発話主体は
(どうやら、星か?)あるいは(人間が星か自身のことを思いやる隠喩のことか?)そんな推測だけが残っています。後半を読んで行くと、人間の心情に近づいているような……。
タイトルからすると自身のことのようです。そこはかとなく憂鬱や憂いが感じられることはわかりますが、ヒントのような匂わせ方は欲しいと思います。中盤あたりに主格的人称を持ってくるだけでも大分違うと思います。評価のほうは、すみませんが、もう一回待ってください。


3 喜太郎さん 「消しゴム」 9/10  初めてのかたなので、今回は感想のみとなります。

よろしくお願い致します。消しゴムの独り言。フレンドリーで、ちょっぴり切ない流れを含んでいます。
出だしは少し文句言ってるけど、両者には基本的に良い繋がりがあるような気分の中での「ちょっとしたこと」のようです。詩の主旨としては基本的合意が感じられるのがいいですね。
「それにしても よくこんな~」以降がとてもいいのです。ホロッとさせられます。ホントにこの部分がいい!自分は消えてなくなるけど、最後まで相手への愛情と激励を忘れない。道具とは酷使されてもいい。愛用されてこその本望と言うべきでしょう。特に技巧的ではありませんが、素直にまっすぐに書け好感です。この心情、伝わる部分は大きいです。連分け無しもいい判断だったかもしれない。少し児童詩的に読んでもよさそうです。ぜひ、また書いてみてください。


4 荻座利守さん 「明月」 9/10

今年の仲秋の名月は9/10でした。そうすると、この詩は殆どその場で書かれたことになります。
その”同時通訳的“”ライブ感覚的“筆致には畏れ入りました。「明月=名月」と把握して差し支えないでしょう。「美しい」と思うのは誰しもでしょうが、荻座さんは、それプラス、「孤独、孤高、寂寥」といった感覚で、これを把握し詩化しています。それが今回のテーマでしょう。そして、それは読んでいくうちに、何処にも無理が無いことがわかるのです。自身の孤独感、ひとつ、ポツンと浮いている月の寂寥感。これらが何処かで繋がっている。やや古風な表現ながら「肝胆相照らす」といった形容までできそうです。古風と言えば「明月よ」の呼びかけは良くも悪くも少しオールドファッションドかな?まあ、日本人が月を想う場合、そういう傾向は殆ど織り込み済みでしょうけど。それだけに、今回やや平凡か? ただし冒頭既述の事情―当意即妙により佳作を。


5 cofumiさん 「アフリカの仔象」 9/10

この詩の味読や解釈上の焦点は次のようになると思います。
「主人公は誰で、何処にいるか?」なんです。その関連で言うと初句「夢を見た」です。この詩の全体像として、かなりリアルなものを感じるのですが、それでは、この夢の範囲は何処までか?それによって対し方が違ってきます。それはしばし措きます。冒頭の疑問に戻って考えます。
主人公は2連以降があるので、現地の原住民などではなく、たとえば、アフリカを旅する文明人などが適切のように思えます。この詩の謎及び不可解は何の予兆もなく「バスタブ」が出て来る事です。ほぼ全篇無事に読んで来られるんですが、ここでガツンとやられるわけです。それは冒頭「何処にいるか?」にも濃厚に関わってきます。この「バスタブ」は初句「頭から水をかぶった」に関係あるのか? この詩の全てがバスタブでの幻想だったのか?詩行自体は細かく深く書かれて、力量を感じさせるものです。「生きるために生きている/死ぬために生きているんじゃない」などは非常に名句なのです。詩に至る構成上の手続きが少し違うように思えるんですが……。佳作一歩半前で。


6 エイジさん 「黄昏」 9/10

日常を淡々と(やや気だるく?)語る。実感だったのでしょうね。大きな詩ではないですが、慣れて安定した書きぶりが受け取れます。それほど深堀しない叙景の適度さとふっと出る呟き・心情の対比が面白く、全体を作り上げています。意気の上がらない内容なんですが、読んでいると何故かホッとするこの詩の不思議。「お金使っちゃったな」は気分的なテンションを示して、詩の中で効果をあげています。この詩のキャラクターの一端を表していると思う。趣味的な件で強いて言えば「僕の人生って~」は少し大きいので、日常ラインのフレーズと入れ替えて、周囲と揃えてもいいかも、です。佳作を。


7 晶子さん 「銀杏」 9/11

この詩は中間部を味わえるかどうかにかかっている気がします。出だしから「虫達が蠢いていた」
まではわかります。「大地の温もり~」あたりからあやしくなってきて、「~許して欲しい」まで(中間部)が、僕は作詩意図、解釈、雰囲気の掴み方、がわかりませんでした。何か出典のようなものがあって、それを隠喩したのかもしれない。僕の読み不足が多くを占めるのでしょうが、ここは詩の雰囲気統一から言って、再度検証されてもいいかもしれない。「夜明けが近づいている」以降、最後までは当初のトーンに戻っていて、いいと思います。最後は滅ぶにあたってのその望み方でしょう。すいません、中間部が今一歩、この抒情に乗り切れなかったので、一歩前で。


8 秋冬さん 「捨てられないゴミ」 9/11

この詩は……弱ったなあ……、ある意味、最も難しい評になりそうです。ネット上とはいえ、お付き合いがあるわけだし、「はい、そうです」とは書けないし、「そうですか、大変ですね。お察し致します」でも、所詮は他人事のように響くし、最善の評的策は、この詩はフィクションで、比喩的、デフォルメが利いているのだ、と解することだと思われます。 そのようにすれば、終連はオチ的な雰囲気が味わえそうです。
「佳作」などとしても全肯定のようになってしまうし。困ったなあ、評価は今回、お休みとさせてください。


9 紫陽花さん 「前に進め私」 9/12

(この詩の勢力・精強に佳作を以って報いん!)―こういう詩は珍しいです。「自らを慰める」といった慣用句がありますが、こちらは「自らを鼓舞する」―(鼓、舞う。僕、この言葉好きなんです)。
そんな詩。まずは定規と線の比喩がとてもいい。利いています。僕はこの評の中で「積極的生産性」と定義付けます。そして一連の「流してしまえ」を「積極的廃棄性」と把握します。この両作用によって、タイトルスローガンの達成を見ます。この詩、他者に向けたら大変なことになるんだけど、自分への事。それが爽快!前向きにエッジが利いてます。この詩 “攻めてますなあ~”

アフターアワーズ。
こういう勢いのある詩は、もっとセンテンスを短くしたほうが切れ味出ます。興が乗ったので、やってみます。(ええい、全文表記じゃあ~)。

私よ
定規を取れ 線を引け
この退屈な曇り空に
地面に向かって
無数の線を引け
雨になれ
とうとうと流れる雨になれ
思い込みや馴れ合い
そんなつまらないもの全部
流してしまえ
この単調な毎日に
漫然と息をしている私ごと全部
洗い流してしまえ

もう一度
私よ
定規を取れ 線を引け
この真っ白な私の未来に
今度は強く
ただただ真っ直ぐな1本の
光の線を描け

(策としては、命令形、強調部分はなるべく独立行としました)


10 ふわり座さん 「大本命」 9/12

はい、実におもしろいです。人称を「彼女」と「あの(この)子」に意図的に書き分けてくれたおかげで、ストーリー、スッキリ!「僕」の揺れる心のどぎまぎ感もいいし、対して「あの子」のあっけら感も特筆もの。 特筆します。

「このタイミングでまた君か」
「渡さないの?それじゃ私がもらってあげるよ 一生大切にするね」
「フラれたんだね、よしよし」

それ以降の流れ、それを受けての最後のオチは見事。まさに“オチ”ですな。どこを読んでも、可愛く、おもしろく楽しいです。
(けど、これ、二股にはならないんじゃないかなあ) おそらく「この子」は「僕」に好意を持っている、と見ます。前回、確かスタートの二歩前だったけれど、大躍進のSWEETな佳作を。


11 もりた りのさん 「そんなわたしです」 9/12

詩とは小説と違い「隠す文学」だと勝手に思っています。「隠しながら“匂わせ”」、作者と読者の共同作業によりイメージを、インスピレーションを広げてゆく。それらに両者間で微妙にズレる事は日常茶飯時です。しかし、それだからおもしろい。両者により、さらに解釈のレンジが広がるからです。この詩はそのような詩だと思っています。端的に言えば、この詩の主人公の事です。人間か?それとも、けっして外には出されず鉢の中で一生を終える花なのか?多分もりたさんのイメージとは違うでしょう。弁解のように聞こえますが、それでいいと思います。両者にある広がりの事です。もっと本音を言うと、僕にとって「それは何であるか?」は二の次になります。意味や状態のリアルを大汗かいて追うよりも、この詩行の持つ言葉自体の美しさ、深み、抒情味、泣き笑いのようなニュアンス、そして終連。これらが伝わったことによって、この詩は充分に価値達成しています。
これ以降は注意的指摘になります。
上席佳作です。―漢字を使って書いていれば―。全文ひらがなの現状では、評価なし、となります。この落差を考えましょう。
上手いです。想像力があり、それを活かす書き方も知っている。しみじみとした抒情もある。それは僕が漢字使用の標準仕様に置き換えて別紙に書き、読んでいるから理解できたのです。子ども向けに書いた(?)傾向なしとしないんですが、―それで全ひらがな?―とも思ったのですが、この詩は子どもには理解できません。あくまで大人向けの詩です。ところで、全ひらがな使用はシンプルなものにこそ似合います。大人の詩で、このサイズで、この内容で、全ひらがなだと、解釈~味読に倍以上の時間を要するでしょう。(わかったような、わかんないような)で終わらされる恐れがあります。(めんどくさい)―飛ばされる可能性さえありそうです。TPOが違います。意味深長な詩だけに表意文字である漢字を援用しない事には、この事態はこの詩にとって不利に働くばかりです。盟友評者の雨音さんが、全ひらがな詩に慎重なのがわかるというものです。ぜひ、標準仕様版を持っていてください。


評のおわりに。

(関東では)今朝は寒かったくらいでした。少しづつ季節が動いてゆくようです。三連休ながら台風が心配。 では、また。

編集・削除(編集済: 2022年09月16日 16:47)

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