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スレッドNo.6679

眩しい  荒木章太郎

眩しすぎるイルミネーションの日々

夜空に広がっていた神話は

更新されないまま

静かに消去された

白夜仕様のベッドに

僕はうつ伏せに飛び込んだ

眠りは浅く闇に沈めない

魂が跳ねている

存在は軽量化されて

数値に変換された

比較可能な単位へと解体された

哲学を重石にして

沈もうとする

だが

深度は制限されている
そこは

無意識と呼ぶには

あまりに明るい

巨大な企業が空を覆い

名もなき群れが

互いを評価し

互いを是正し

互いの正しさを

黙って見張っている

監視カメラに守られていた

光は安全で清潔で善意だ

感情でさえ

最適化され

記録され

効率よく

流通してゆく

底は糠床になっていた

前世紀までの記憶は黄ばんだ鉄屑となり

意味も由来も失ったまま

絶望の縁で発酵し続けていた

現実と本能が混ざり

酸味とカビの匂いが立ちのぼる

実存と認識が溶け合い

涙と血の味が

言語化を拒んでいた

ここはこころ

だが

内面ですら完全には

照らしきれていない

魂は

肉体に宿るのではない

心に宿る――

どこかで

まだ信じている

心は宇宙

測定される前の

沈黙を抱え

光の届かない

あたたかな襞が
蠕動している

母親の手で糠床を

掻き回しているような動きだ

そこは魂の通り道                                                         

そこでは

管理も

評価も

まだ

息を潜めている

そして

名もなく

声もなく

それでも確かに

希望が胎動していた


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