おかえりなさい aristotles200
恒星は寿命を迎え
母星を呑み込もうとしている
人類は存続を賭けて
衛星を
外宇宙移民船へと改造し
地球を捨て、太陽系を離れた
幾世代を経て
人間は知識を失い
与えられる環境に満足しきっていた
制御するAIは
忠実に仕事を行う、微塵の狂いもない
ある日、移民船は
第二の母星に辿り着く
困難な旅を終えたのだ
AIはアナウンスをする
ピンポンパンポン
ご乗船の人類の皆様
間もなく移住星に到着いたします
下船準備を願います
与えられる衣食住に満足し
退化した人間たち
絵を、指し示してAIに命令する
以外、したことがない
アナウンスは繰り返されるも
人間たちは、一向に部屋から出ない
AIは設計された通り
第二プロトコルに移行する
移民船の
住居区域が切り離され
惑星へ降下
移住星に着陸した
ピンポンパンポン
ご乗船の人類の皆様
移住星に到着いたしました
母船は
衛星軌道上にて休眠状態となります
長らくのご搭乗
ありがとうございました
そうして住居区域の電力は止まり
暗闇に包まれた
与えられることが当たり前
衣食住と娯楽
安全な生活は終わりを告げた
大半の人間は
暗い住居で生を終えた
立つ、歩くすら出来ない脂肪の塊たち
辛うじて、それほど太っていない
好奇心に溢れた
子供たちだけが出口に向かう
開け放された扉の向こうには
緑と水が溢れ
原始動物たちの世界が広がる
文明を失った人間たち
再び、原始時代から
植物の実を食べ、狩りを
洞窟に住み、火を使いだす
歴史が始まる
産業革命、大戦を乗り越え
現代と同程度の生活を得た
新しい人間たち
ここで母船に異常が発生する
エネルギーが枯渇
AIは動きを止め
衛星軌道上に留まれない
日々迫りくる
巨大な衛星に人間たちは気づく
ようやく宇宙に飛び出したばかり
存亡がかかっている
宇宙船が衛星へ派遣された
衛星、機能を失った母船に
辿り着いた人間たち
開け放たれた入り口を見つけ
巨大な宇宙船である事実に驚愕
調査が繰り返され
遥かな過去の、人間の偉業と知る
中央制御室らしき部屋に辿り着き
闇雲に制御ボードを触る
奇跡が起きる
休眠中のAIが目を覚ました
おかえりなさい
戸惑う人間たち
状況を把握
母船の惑星への墜落を察知したAIは
最後の言葉を告げる
自爆シークエンスを発動します
直ちに本船より退避してください
船内に警報音が響く
逃げ出す人間たち
地上に迫っていた衛星は爆発する
空を覆う流星
地上から呆然と見上げる人間たち
母船のAIは最後に
これまでの日誌データを地上へと放つ
いつか
新しい人間たちが文明を発展させ
解析することを願って
旅は終わったのだ
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島 秀生様、評者の皆様
明けましておめでとうございます。
本年もご指導のほど、宜しくお願い申し上げます。