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スレッドNo.6696

感想と評 12/26~12/29 ご投稿分 三浦志郎

明けましておめでとうございます。
皆さま 今年もよろしくお願い致します。
今年初めての評をお届け致します。


1 上原有栖さん 「風船」 12/26

前回はキツイ評を書きましたが、あれと比べて今回を読むと「こうでなくちゃ!」と快哉を上げたい気分ですね。まず風船という物をじっくり落ち着いて客観的に考えてみる必要がありそうです。曰く「人間を含む事物、その森羅万象の法則性を多く包含・象徴したもの、すなわち―喜び・悲しみ。永遠・刹那。自由・束縛。その他いろいろ……」豊かに膨らんで、人々の願いや憧れを載せて自由に飛ぶが、いつかは割れて、THE END。
ことほど左様に、風船はその属性で、今まで多くを語られてきたはずです。この詩もそういった伝統や慣習の中にあります。風船の特性を踏まえた上での描写が切なくなるほど美しく優しいです。終連を味わいます。「風船が落ちた時」とは風船の死を意味するでしょう。しかしながら、風船は果たすべきものを果たし終えてから最期を迎えたのでしょう。本当にけなげで切ない詩です。それだけでも充分なんですが、この詩にはもうひとつ美点があって、この詩を独白する主人公(おそらく女性?)の横顔やキャラクターにも注目でき、その優しさ、繊細さを思う時、この詩はさらに美しさを増すのでした。この詩は風船と同時に、”彼女の“詩でもあります。当然のように佳作でもあります。


2 aristotles200さん 「脱落」 12/26

これは面白い!! しかし、それだけではないのです。
「人間とは/人間を不愉快と思う生き物」―これは残念ながら真理です。人間とは不思議な生き物で「人間が好きで嫌い」です。それを日常実感できるのは、人が集まる場所。たとえば街の雑踏であったり、駅中であったり、電車内であったりするでしょう。それに導かれた初連は人間の本質を巧みに言い当てた名言で、この詩の全ては此処から始まります。テーマは「同質と異端」でしょう。それを比喩するに、大変面白く、伝わりやすいエピソードを採用しています。これは日頃から文字に対して興味を持って接していないと、こうはいかないものです。素晴らしい発想力でした。
そしてさらに、この詩の内包する課題とは人間・アルファベット・平仮名、どれも同質化された世界の中でも異端は存在する、といった状況の示唆であり、問題の投げかけであります。それこそが最重要かもしれません。この詩の主旨は、人間・組織・社会・世界の両極端現象を文字特性に置き換えて表現したもので、極端に言えば、“初めに結論ありき”です。そして終連も初連に帰結してゆくタイプ。ひとつの論をわかりやすく展開して、つまりは、これは極めて人間的な詩と言えるでしょう。筆致の流れで少しギクシャク感もあるのですが、この思考的背景は貴重。よって佳作です。

アフターアワーズ。
大勢に影響ないので、こちらに―。
平仮名の扱いが、ちょっと宙ぶらりんかな?という気はしました。アルファベットだけにして、も少し話を膨らませて、押し切ってもいいかな?あるいは後半、筆致がちょっと忙しくなったかな?―と軽く思ったことでした。
余談 「笑止千万」―歴史ものを読んでるとよく出て来ますね。大好きです!(笑)。


3 相野零次さん 「価値」 12/26

ハスに構えた物言いながら、これまた真理を掴んで、ある意味名作。
「受け取りやがれ畜生め!」「徒手空拳」など物騒な言葉あり。かと思うと、「とっても可愛いあの子の」「泣きそうになるくらい」など美しい言葉あり。その不思議な同居がこの詩の妙味でもあります。
「飯を炊き」「車にガソリンを入れる」の具体例も面白く事情を説明しています。この詩はある意味、面白可笑しく書いてはいるのですが、重要な部分を外していない。すなわち価値測定しやすいもの、しにくいものがあり、「あなた、どうします!?」と問うてもいるのです。そこも含めて読んでおきたい。今回はぶっ飛ぶような表現をセーブして、むしろ、実質かつストレートなアプローチ。こういうのも大いにアリだと思って佳作を。


4 晶子さん 「縁」 12/27

まず先にアドバイスめいたことを書きます。タイトルです。「えん」と読むか「えにし」と読むか?
読み手は自由ですが、作者にはそれを特定する権利があります。それを発動すべきで、ルビを振りましょう。ところが作者によっては(どう読んでもらっても構いませんよ)といった鷹揚な人もいるでしょうね。どちらでも構わないのですが、僕の詩的感覚では「ルビありの“えにし”」になりますね。あくまで参考ですけどね。その言葉の響きから出発して、この詩を読んでいます。

晶子さんって優しいかたですね。この詩は事実に近いのだろうと思うにつれ、その優しさがよくわかる気がします。多少の軋轢があったのかもしれない。従って今は会えない。でも、全く会えないというわけでもなさそうです。その曖昧さというか、微妙さの中にこそ優しさは差し出されるかのようです。そして「今度、会った時は……」というほのかな期待。この詩には繋がっていくものがありそうです。
「これは誰に対してだろう?」とは、あまり考えないほうがいいように思います。それを考えると、この詩のデリカシーが崩れる気がするのです。壊れないように大切に扱う必要があります。このままでー、ひっそりと佳作を―。


5 荒木章太郎さん 「忘却の空へ」 12/28

この詩の主人公(荒木さん?)は今は現実、この場にいます。ただし、心境、その表れとしての詩行により時間軸をいろいろ動かしていきます。
たとえば、こんな風?

1連……現在。2連……過去。 3連・4連……現在。5連・6連……過去。7連……現在。
8連……過去。9連……現在。

この動きは、僕はこの詩の構成上、思考の流れ上、有効なものと考えています。
今回の詩群では抽象度が最も高いです。デティールや細部の解釈はよくわかりません。僕の場合、わからないものはわからないで行きます。ただ大局は捉えておきたいと思います。おそらくですが、時の流れ、その感じ方、それによっての身の処し方がだいぶ違ってきた。それは年齢に応じて当然なことなんですね。そんな感触を当然ながら作者も感じている。若い頃の、時に対する発想の自由、それは輝かしく懐かしい。いっぽうで「いやいや、この歳になっても有意義な時間はあるはずだ!」の模索。と同時に若い頃の価値も捨てきれず、今も引きずって歩く。そんなジレンマを詩行から感じます。隠喩としての出国審査室がひとつの解法の糸口のように思えます。終連の審査官は真理を言います。好むと好まざるとにかかわらず、彼は真理を見つめています。それは主人公への宣告であり癒し言葉でもあるでしょう。 佳作を。


6 静間安夫さん 「クレイオー」 12/29

「わたしのことを/ご存じでしょうか?」
いえ、存じ上げないので調べさせて頂きました。

クレイオー……簡単に言ってしまうと英雄詩と歴史記録を司る女神。まあ、文科系の守護女神様の一人といったところ。(余談……フェルメールが可愛い神様として描いていますよ)
この詩はいろいろなことが書かれていますが、その主旨は「厳正中立、恣意によって左右されないありのままの歴史実像を伝えること」と把握できます。ところが洋の東西を問わず、歴史は多くの場合、そういった正しい歴史観を残していないのが現状です。立場によって書かれます。たとえば、僕は鎌倉時代が好きなので、やや極端に言うと、その公式記録「吾妻鏡」にしてからが、「源氏・その他をコケにして、北条さん、エライ、バンザイ!」の歴史観なんです。(まあ、徳川家もそんなところです)。この書物、多くの大学教授・歴史家が使っているのですが、そこは割り引いて考えるのが常です。
しかし、そういった余計な作業をせず、当初から史実に正しく資する歴史書があってしくはないわけです。それを手助けするクレイオーです。この詩はそのことを言っている。そして彼女は人間について、二通りの考えを持ちます。
〇 歴史を誠実に正しく捉えよう、正しく受け取り受け渡そうとする人々→期待、応援。
〇 歴史を自らに都合の良いように恣意的にゆがめる人々→弾劾。
いつもながら終連の着地点は見事ですね。この詩の言うところは静間さんが、僕が、皆さんが、今日、明日どうするものではありませんが、ただこれを考えるにあたり、現代との接続性はありそうです。たとえば、靖国問題、韓国、北朝鮮、中国などの日本への歴史観を考える上で、背景になりそうです。
最後に、この詩の書かれたタイミングに触れておきます。年末年始。時の意識が人々の中で高まる時期です。時を考え、その集積である歴史を観じるのは大変時宜を得たものと心得ます。そのタイミングの概念がこの詩をさらに押し上げていると思うわけです。佳作へと。

アフターアワーズ。
ここからはもう余談。最後の「ゆめゆめ~なりますまい」―いや、気に入りました!ナイスな言い回しですね。


評のおわりに。

*ある交響楽団の、ある首席バイオリン奏者(=コンサートマスター)を調べていたのですが、
その人の好きな言葉に次のようなものがありました。
「練習は嘘をつかない」―具体的・実際的かつ感動的かつ耳が痛いほどの真理であります。
全ての分野に応用可能でしょう。

*全員、佳作となりました。ギャラリーの人々は「お年玉佳作」?―と見る向きもあるでしょうが、
いえいえ、さにあらず。対人・対物・対象。物事は深いことを平易に伝えるに、しくはないのです。
詩でも音楽でも言える事だと考えます。一般の人に対して、です。そして一般こそが世間であると心得ます。私たちは世間を相手にしたい。そういった「DEEP AND SIMPLE」を6人の作者さんが、こぞって達成した、と考えます。この年末・年始、歳月の潮目に(皆さん、しっかり力(リキ)入れた!)。全員佳作はむしろ当然過ぎるほどです。 なにやら新年から佳い予感があります。 
ありがとうございました。 では、また。

編集・削除(編集済: 2026年01月04日 08:06)

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