傘 TICO
毎朝同じ服を選ぶ
少しの変化も許さず
変わらない君が完成する
最寄りの駅まで
逆算して5分
以前は立ち寄っていた
喫煙所を視界にも入れず通り過ぎ
職場までの残りの一本道を
高架下をくぐって歩いていく
スニーカーを履かなくなったね
同じタイプの革靴を
ローテーションで履き続けている
雨の予報だからと
折り畳みの傘を
ちゃんと持って出かけたけど
君は使わないのを知ってる
仕事の帰り
雲行きが怪しくなって
夜に傾いた群青の最下層を
鈍色が遮蔽していく
君は見上げることなく
足早に駅まで向かい
決して傘は開かない
高架下に入る頃に
ついに雨は落ち始め
君の肩をほんの少し濡らした
吹き抜ける風にも反応せず
雨宿りをする君は
どこかずっと遠くを見ている
旧友が通りかかり
君に声をかける
君は懐に用意している顔で
そつなく挨拶を交わす
近くだからと
君に傘を貸して
駆け足で雨の中を去っていった
君は傘を握りしめて
高架下から出られなくなった
※前作「作り笑顔」の連作を意識したものです。
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明けましておめでとうございます。
ひょんなことから詩の世界に戻ってきた昨年、自分の変化に地味に驚いています。
皆さま本年もどうぞよろしくお願いします。