奇跡の液体 光山登
テーブルに並べられた茶色の液体は、
昆布だしと豆腐のほのかな甘みがかきたてる幸福と、大根と黒味噌の確かな苦味がもたらす不幸が混じって、
僕らにひとつのイメージを見せつけていた。
僕らはどこへ連れ去られようとしているのだろう?
むごい現実がいたるところで漆黒の翼を広げながら待ち伏せしている。
鋭利な翼の先には猛毒が塗られている。
その液体はやわらかな湯気とともに、僕らを現実の先へと連れて行く。
不幸の苦味は幸福を引き立てるアクセントとなり、僕らをやさしく包み込むコンポーネントのひとつとなる。
快楽、
それだけにとどまらない至福の瞬間が、
濁った液体の中に潜んでいる。
茶色に見えていた液体は、舌に含んだ瞬間にピンク色に染まり、
僕らのむごい現実をも明るく染めていく。
純粋な喜びの瞬間が、ここにある。