中也の墓 小林大鬼
山々に囲まれた湯田温泉
住宅地の脇の墓地に
中也と家族の墓がある
題字は中原中也自身
中原家累代の墓と刻む
両脇に花々が添えられ
彼が好んだビールの缶が並んでいる
自分は合掌だけをして
古びた詩集を取り出して
彼が愛した詩を読み上げた
ダダに生きた殉教者は
我が子を失い
身も心も病んで
帰郷を前に鎌倉で死に
ただ骨だけが
この故郷に戻って来た
雪降るたびに
悲しみだけが降り積もる
墓参りの後
私は独り河岸に出た
メルヘンを浮かべたような吉敷川
私は斜めの石板に
足を滑らせ尻餅を打つ
あまりの痛みに叫んだ声は
師走の澄んだ空遠く
夢のように流れていった
黒い帽子と
黒いマントの面影が
風に吹かれて揺れていた
儚く優しい福音だけが
私の中に木霊した