丘の上で風が吹いた 暗沢
丘の上で風が吹いて
吹き抜ける下
影のひとつも見当たらず
外の世界が見たいのだと 卒にきみは言ったのだった
宮殿があるのだと きみはよくわからないことを言った
「お前はバカのくせに疑り深くてよくない
キチンとボクが写真に収めて見せるから
ありがたく思えよ」と
あっそう と応えておいた
一等見晴らしのいい丘の上へと きみは登っていったのだ
陽の項垂れる丘の上へと きみは登って行ったのだった。
どこぞに建っているとかいう 宮殿を望むため
丘の上で風が吹いたのは きっとその時なのだろう
吹かれた風に 乗っていってしまったかのよう
きみの姿は 見えなくなった
願わくば
宮殿とやらが見えたにしろ 見えなかったにしろ
僕はきみがくたくたに疲れきって
丘を降りていったのだと思いたい
忘れた頃にでもまた ずるい顔でひょっこりと
姿を見せるのだと願いたい
ところできみはかくれんぼが実に上手かった!
丘の上で風が吹いて
吹き抜ける下は
さみしいてっぺん