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スレッドNo.6743

望郷  上原有栖

目の前には寂しい空き地
名も知らない雑草がお互いに背比べしています
ここには、小さな公園がありました

向こうへ駆けていった子供たちと
幼かった僕らの声は
伸ばし続けた黒髪の裏側
両耳の奥にまだ残っているのです

在りし日の面影は透明になった途端
随分と遠くへ行ってしまったようで
精一杯、手を伸ばしたけれど
輪郭に触れたと思ったときに
爪先はむなしく虚(うつろ)をかすめるのでした
思い返すと、いままでも
それはきっと、これからも

目を細めて考えていたのは
かつて公園で過ごした日々のこと

はる なつ あき ふゆ

笑って、泣いて、叫んで、願った
ここで生まれた淡い恋心が
膨らんで弾けたのを覚えています
ふたりで座った白いベンチは行方不明
果たして成仏できたのかしら

もう明日には発ちます
今度はいつ帰ってくるのか、分かりません

いつの日か
空き地は新しい建物に
上書き保存されているかもしれないし
あいも変わらず、空き地のまま
雑草がさらに生い茂って
綺麗な花が咲いているかも

それでも、僕は忘れないでしょう
離れれば離れるほど心に焼きつく
この場所を

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