潤情 上原有栖
吐息が残るくちびるに
まっすぐ紅を引いて
視線をこちらに誘ってみる
慕情を言葉にしなくても
生唾を飲み込む音が
聞こえるほどに
ふたりの頬は近付いて
肩に添えられた両手に伝わる
絹衣(きぬぎぬ)
越しの体温は気付かれているだろう
耳元に寄せた口の動きに合わせて
囁かれる魔法のことばに
わたしの脈はどうしようもなく高鳴って
しずかに濡れている
おだやかに潤っていく
からだの奥のさらに深くに
いつも隠されている
ひそやかなる場所が
同じであってほしい
性の違いを超えて
おんなであっても
おとこであっても
芯は潤っている、と
あなたは
とても優しいひと
口に出さずとも伝わるから
過剰なほどに整えられて
切り揃った深爪(ふかづめ)を見つめれば
誰に教わったの
愛するあいては
決して傷をつけてはならぬ、と