一人は好きだけど孤独は悲しみなんだね 喜太郎
一人が好きだった
気を遣わなくて済むし
話すのも苦手だから
クラス替えからしばらくして
僕の心に
君は土足で上がり込んできた
いくら避けても
気づけば近くで笑って勝手に話してる
「好きな人とか 恋人とか まだ友達も作らないの?」
ズカズカと耳から心に上がり込み
いちいち言葉を選ぶことさえ苦痛だった
「明日と不幸は いつ来るかわからないのよ
友達になってあげる 彼女でもいいよ」
僕は逃げるしか出来なくて
それでも追いかけてきて
気づけば二人で過ごす時間が増えた
仕方なく一緒に出かけたりもした
「やっと笑ってくれたね うん 思った通りの素敵な笑顔
大切な宝物が出来たよ ありがとう」
そう言って携帯のカメラで笑いながら撮影していた
何を言っているの分からなかったし
ただ恥ずかしさに顔を紅らめるしかなかった
やがて彼女は休みがちになり
遂にしばらく来れない事を先生から告げられた
重い病気?
何度か見舞いに行こうとしたが
先生から止められた
「面会はご家族だけらしいんだ」
会いたい………この気持ち
また一人の生活が戻った
静かで会話もなく気楽なはずなのに
そうじゃかった
物足りなくて 何故か切なくて
何より寂しかった
胸の中の苦しさが
もしかしたらと僕の心に芽生えた想いを感じさせた
明日と不幸はいつ来るか分からないのよ
桜の蕾が膨らみかけた頃
君の死を知らされた
君は癌と戦っていたんだね
そんなそぶりも見せずに笑ってくれてたんだね
君の両親から渡された手紙
僕が初恋の人だったなんて
幸せになってねって
最後まで土足で心に上がり込んで
足跡をはっきりと残して消えるなんて
桜の花びらが舞う空を見上げ
僕は泣いた
手紙を胸に
もっと優しくしてあげればと
僕も好きになってしまったんだよと
初めて恋をしたんだと
泣いた
ひとりが初めて辛く苦しく感じた
これが孤独なんだと思い知らされた
※『君の膵臓を食べたい』を鑑賞後に書き残したくて書きました。