氷片 光山登
朝の凍りつくような呼吸とともに目覚める。
この瞬間に僕はおぞましい世に生まれた。
与えられた時間は冷酷な夕日が沈むまで。
洗面所の水が氷の刃となって襲いかかった。
部屋の灯りは冷凍された死体のように暗い。
命あるものはいつか「一切」のもとに還る。
底冷えのする大地をざりざりと踏みしめた。
見渡す限り青白くただれた目の人たち。
彼らもかけがえのない儚い命を与えられた同志。
いつか「一切」に還るさだめの仲間たち。
無慈悲な雪で薄汚れた地面を、
残酷な空が鈍く覆い尽くした。
それでも僕らはけっしてひとりぼっちじゃない。
みんな「一切」の氷片として永遠につながっている。
夕日が沈めば僕を構成していたものは解体され、
明日の僕へと再構築される。
明日の僕にはまた別の悩みがあるだろう。
けれども明日の悩みは明日考えればいい。
僕らはいつでも氷片で繋がり合っているのだから。