over. 上原有栖
気怠い空気の午後三時
短針と長針は90度の距離をおく
アイス・キャンディを咥えながら
眺める無音の秒針
火照った身体が
タオルケットに包まれている
なだらかな稜線の先に見えるのは
華奢な首元と足首の肌色だけ
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ふたりは
都合のいい、関係
知っているのは
必要なときに繋がる電話番号
知り過ぎると囚われてしまう
本気になった側が負ける遊戯(あそび)
あなたは
縛られるのも悪くない、と笑った
わたしも
束縛されるのは嫌いじゃない、と、嘯いた
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再び視界が覆われる《over.》
引き締まった胸板に腕を回す
紫煙の残り香に包まれる《over.》
わたし、あなたと同じ煙草を喫うようになった
感情が昂ぶっていく《over.》
恥じらいの理性に今だけは鍵を掛けて
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目覚めると、ひとり
短針と長針は随分と離れてしまった
無音の秒針も
逢瀬の終わりを告げている
《So it's over.》