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スレッドNo.6802

野辺の枯れ花  人と庸

 案内も必要とせず山に入る者を
 かれらはいつも見送っていた

色々なものが過ぎ去ったあとに
残されたものだけが佇む季節
かれらは自身の花穂に
かつては光や風をいっぱいに湛えていたが
いくつかの種子を送りだしたあとは
その間隙に
わずかな空気が行き交うのみ

山の入り口から見下ろす砂防堰堤の
いまだ満たされたことのないその内側には
みわたすかぎり
みわたすかぎりの
枯れ穂の花束
なけなしの
しかし常に外側に向く矜持を束ねて
集うかれらの祝宴だ

 川の音は上流に向かうにつれ
 宴の静けさにかき消され
 伝える言葉を忘れてしまった

 きまぐれにはしる鎌刃の閃光に
 かれらは右腕からゆるやかに麻痺してゆき
 もはや 風に揺られることもない

いま 山に入ってゆく者がいる
その者は戻ってくるのか こないのか
戻ってこなければそれでよい
戻ってきたなら
腕いっぱいになるまで
枯れ花を束ねて贈ろう
精一杯たたかったとて
決して正義になりえない
それに気づいた群れの中の孤独な者に
無音の言祝ぎとともに

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