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スレッドNo.6829

弱水三千  上原有栖

数多の生命(いのち)は
連綿と続く大河の一滴になる

悠久の流れのなかで
水粒が寄り添って
時間という平野を下りながら
対岸が霞むほどの河幅になった

銀色に輝く大河は
眺めるだけでは底も知れぬほどに
深くの水をたたえる
ときに嵐に晒されることはあれど
拡がる水面は今日も波立ちぬ

この世界にわたしは
愛によって生まれた
父と母から辿る軌跡を遡れば
さらに多くの人びとが
願った愛によって生まれた

途方も無い流れに溶け込んでいた
小さな滴のわたしを
父と母が選んで
その温かい手が掬いあげてくれる━━━━━
かつて幼少に見た夢は果たして

それは数多の生命の記憶
大河の岸辺で遠い昔から
名も無き人びとたちも
同じように選び
繰り返し掬ってきたのだよ
その滴を愛するために

いつかわたしも
大河を前にしてひざまづく

掬いあげた
貴方を心から愛するために


******

(解説)
※弱水三千(じゃくすい-さんぜん):中国の故事成語。「任凭弱水三千,我只取一瓢飲(弱水三千ありといえども、我ただ一瓢を盛りて飲まん)」。

元々は「世の中に魅力的な人は大勢いるが、自分が愛し、選ぶのはただ一人だけである」という恋愛専一を表す表現。

これを新たに、「世代を超えた愛の専一」という解釈に拡げて書いた詩です。

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