怯える指先 ゆづは
最近 水道水が怖い
台所の蛇口のレバーを押し
恐る恐る
乾いた指先を差し出すと
弾かれるような痛みが
小さく神経を震わせる
パチッ
見えない火花が散って
心臓が跳ねる
またか──
嫌になる
昨夜の汚れた皿の油が
洗い桶の底で固まって
嗤っている
これさえなければ
痛い目にあうこともなく
穏やかでいられるのに
とシンクを睨む
ステンレスにぼやけて映る
歪んだ顔が
ぶつぶつ文句を言う
──私のひ弱な神経が
この世界を
こんなにも冷たくしているのか
私は一体
何と戦っているのだろう
ただの家事か
それとも
この蛇口の向こう側に広がる
暗く湿った沈黙か
明日もまた
蛇口のレバーを押すだろう
怯えながら 呪いながら
それでも
この台所で
生きていくしかない