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スレッドNo.6855

電子化の帰り道  荒木章太郎

これまで積み上げてきた
専門書を電子化するために
朝の新宿西口を登る

老朽化した肉体の
立て替え工事が続いている
改善と改悪の階段を上って
地上に辿りつけば
通勤を急ぐ人達が交差点を行き交い
間違いを認めたらその価値を
失うかのように時を進めていた

人々が踏みしめるたびに
凝り固まる思考の下で
考察を待つ歴史を後目にして
電子化の店に入った

これまで積み重ねられた
体験は裁断されて
肉体を離れる思想
これで僕は実体を所有しない
全ての言葉はスマホに捧げた
これを誠実なもので包み
いつも身につけて祈るのだ

聖書は前世に置いてきた
この世界では聖霊は情報に
置き換えられる

夕暮れの頃は
ゴールデンに輝いていた街が
今では白昼に消え入る月に変わる
電光掲示板だけが光る
想い出横丁も電子化されて
固く口を閉ざしていた

回想に浸る魂に鞭打つ
健康な風が冷たく
酔うことを許さない
僕の内に神様がいた頃のほうが
汚れていた

もう温もりは人に求めないと
決意したとき
熱い涙が流れる
強い自我を神様に捧げると
人の想いが胸に宿る

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