芯の重さ 荒木章太郎
あの赤信号も
誰かの演出なのか
俺の車はエンストして
海の前で立ち竦む
これは俺の物語だ
みんな創作に夢中で
生身のやり取りが遠のいていた
感情を表現の道具にしていた
やがて道具は兵器へと変わる
本当は世界の物語を
作らなくてはならないのに
面倒になってきているのだ
夜に脅されていた
優しさが朝の水平線に
ひれ伏していた
ひたひたと忍び寄る死と
コトコトと煮込まれる生の
音すらも聞き分けられないとは
なんて残酷な無邪気さだろう
朝と夜の狭間で
挟まって収まっていた
俺の理想と現実は
かつてはぶつかり合ったはずだ
光と影
思考と体
美と醜
意味と無意味
かつては生きるために
命がけで遊んでいたではないか
俺の頭蓋の裏側を
猥雑な言葉で塗りたくってみた
俺自体が詩になればいい
生で振下ろした言葉は
ネット警察の検閲を受けた
投稿ボタンを押しても
俺の詩は文脈を無視されて
はじき返された
物語は受け入れられずに
沈黙を続ける画面
ああーー言葉が重いのか
重すぎる道具を振り下ろしていた
直接ぶつけることをやめた
語れない場所で
思い重いの言葉を
削って削って芯を残せば
剥き出しの言葉より強度が上がり
それはもう振り下ろす
必要がなかった
言葉が重いのではない
俺が軽かっただけだ
検閲を乗り越え投稿できた
画面は静かだった
深さだけが残った