感想と評 2/20~2/23 ご投稿分 三浦志郎
1 松本福広さん 「三日月 2026.02.19」 2/20
注目すべき2~3連。月をこのように書くのは、もうアイデア賞的に素晴らしいです。そして、この連を起点として、詩は多くの要素に広がっていきます。
「月が膨らむ為の食べ物のこと」
「空と地上のこと」
「お月さまと”僕“の優しい触れ合い」
こういったところでしょうか。主人公は幼稚園とか小学校低学年の男の子でしょうか。子供らしく微笑ましい発想があり、メルヘン調も好感です。これは松本さんの「なりきりの功」と言えるでしょう。
ラストの3連はフィナーレに相応しい細やかさと優しさがあります。これがあるからこそ、この詩は輝きます。この詩の男の子に佳作をプレゼント致しましょう。優しい子ですね。
アフターアワーズ。
単元を示すマーク(?)もユニーク。月の写真は、この詩にぴったりです。どこか可愛い。
日付けも晴れやかにタイトル!
ここからは聞き流してください。どうも、この詩はモチーフとして、広がりを持っていそうな気がするのです。たとえば、連作形式にしてメルヘン、童話調なストーリー詩です。月と少年の触れ合い幻想のような……。「はらぺこお月さま」なんてタイトルも可愛い。
あくまで参考です。
2 上原有栖さん 「焔(ほむら)の指輪」 2/22
これはゲームの装備品かなにかでしょうか?全く予備知識を持たない人間が素の状態で読んでどんなことが書けるか、試してみたいと思います。
最初に躓くのは「装飾なぞ無く」「圧倒的な美」。「Nothing」でどうして「ALL」になるのか?この疑問です。何か裏付けとか背景は欲しいわけです。まずそこが視覚的美の問題です。次に身に付けた時の身体性の問題です。ここも「凄い、凄い」的感覚で、論理的には釈然としません。
ですが、この両面―視覚性と身体性―を統括する言葉が存在するのです。「魔力」ということです。乱暴な言い方をしてしまえば、この言葉で、とりあえず全ては文学的に完結してしまいます。僕はこの詩をそんな風に思っています。一点、面白いな、と思ったところは―、
若者よ そなたに
この指輪の
主となる資格はあるか――――
のくだりです。指輪が身に付ける人間の本質を衝いて来る。疑問を投げて来る。案外、此処がこの詩の肝かもしれない。最後に文体について触れておきます。ファンタジー性を見事に纏い、志高く品格ある詩行です。ただ、よくわからなかったので、すいません、評価はパスさせてください。
3 晶子さん 「閉経」 2/22
うーむ、デリケートなテーマですねえ。 男の僕には全くわからない領域・世界です。
同時に、割とプライベート性もあるので、評を書くのもなかなか難しいです。
3連目は“あった頃”の偽らざる思いでしょう。曰くー。
「自分ではないものと会話・修行・神聖なものを預かって・嫌ばかりではない」
このあたり、男からすると、納得と微妙が”微妙に“交錯する感じでしょうかねえ?
ちょっとヘンな例えなんですが、
A…(あー、もう女じゃないんだ……)女性である自分の証明書を失ったような喪失感。
B……「あーやっと終わった、せいせいした!」といったアッケラ感。
両方、想像できるのですが、人によって、A or B? A and B?
ただし、この詩は「それでも」以降、非常に爽やかな意志の高まりを感じます。ここが主要部。
これを境に、どうぞ、新たな人生の局面を晴れやかに過ごしてください。ある意味、書きにくいことを、よくぞ書いてくださいました。その意義の佳作です。
アフターアワーズ。
ある人によると、人それぞれとしながらも、最初、Bで月日が経ってからAが来たそうです。今はもう、全然慣れたそうです。
こういう事を見聞きし、その他もろもろ、女性は本当に大変だと、つくづく思います。真に尊敬されるべきは女性でしょう。
そこいくと、男なんて粗野で単純なもんですよ。
4 Emaさん 「はなつけ」 2/22 初めてのかたなので、今回は感想のみになります。
この詩は日記風、エッセイ風ですが、なかなか面白いことが書かれていて感じ入った次第です。
基調になるのは、雪の日の選挙です。選挙は全国共通でしたが、雪は地域差があったかもしれない。前半は雪以外は普通の休日描写です。外に出て「近くの学校に向かう」が、この詩の主要部分の導入です。無事投票を終えての帰り道。雪の山茶花。白に紅が映えたことでしょう。選挙のせいでしょう。花のイメージは思わぬところに向かいます。開票結果、当選者につけられる花マーク。タイトルにもなった「はなつけ」です。「一票にのっかったであろう/雪の重みをおもう」―このあたり、雪の選挙日を美しく表して印象的です。最後は「世間とわたし」とも言えそうなテーマ性を帯び、大きく終わっています。詩は各方面に少しづつ触れ、それでいて違和感がない。個性的な日を上手く捉えて綴られています。いいですね。
また書いてみてください。
5 相野零次さん 「仲間」 2/22
人間賛歌です。人間とは生ける多面体と思うのですが、もちろん悪い面も持っていますが、僕は良い面の方が多いと思っています。
それは先天的なものに加えて、後天的なもの―つまり人間自身や社会が生み出したもの、マナー・慣習・常識・道徳・法律など―が人間を良質に補佐していると思うからです。この詩はいわゆる「性善説」に沿って書かれ、何の批判も受けない立場を取っています。
このタイトルはおそらく「人間同士」とも置き換えられるでしょう。「仲間」としたことで、人間の美点や平等や連帯が、フワリと身近に舞い下りて来たような、そんな印象を持つことができます。けっして長い詩ではないところで、言っている。
その思い切りの良さも、むしろ爽快。当然の佳作です。
6 小林大鬼さん 「如月刻」 2/23
今年の春節は2/17。 休暇は 2/15~2/23だったようです。
初連は「新年おめでとうございます」といった意味あいでしょうか。ただ次が「消え去りて」。
最後が「終わりを告げよ」で、どこか寂しい感じなんです。中間は比喩的叙景です。「一羽の鶴」
何らかの隠喩でしょう。投稿日付けが春節の終わる日なので、そういった詩なのか、それとも春節全般に関わる中国社会事情を暗示したものか。政府が渡航自粛を呼び掛けているようだし、ひところの大挙訪日・爆買いなども影を潜めたようですし、春節自体が変わりつつあるのかもしれません。それらも含めて、よくわかりませんでした。すみませんが、評価はパスさせてください。
アフターアワーズ。
ただし、旅行者は増えているようです。飛行機は減便しているようですが、そのあたりのアンバランスもよくわかりません。
7 静間安夫さん 「僭称者」 2/23
「せんしょうしゃ」 「僭越」の「せん」ですね。調べると……
「僭称者」……身分制度の下で、本人の身分を超えた地位や称号を名乗ること」。専ら他者からの評価としての言葉です。これは歴史が関わってきますなー。この定義のみに局限した場合、弊害は大きくないのですが、“僭称的な”者が政権を簒奪した場合をこの詩は扱っています。たとえば、日本の三大幕府と豊臣政権は明らかに身分や格が下の者に倒されています。そういった意味で、この詩の主旨は合っています。僕が興味深いのは、6連です。ここでは、例えば徳川家康です。「力こそ正義」で、旧主・豊臣家の滅ぼし方はもう犯罪的なのですが、結果の江戸幕府とは長期にわたる安定社会でした。つまり、この詩では7~8連がそれを表しています。しかし、それ以降はこの“元僭称者”にも滅びは来るのですね。このくだり、僕はどうも幕末がイメージしやすいです。時代の動きで今まで振り向かれもしなかった天皇が担ぎ出される。天皇という「正統」から見れば、徳川など僭称も甚だしいわけです。9連目以降最後までも迫力がありますね。そして、最後、現代にも通じる部分。ここは人間が本来的に持つ「性(さが)」のことと思います。「5」 相野さんの稿でも触れたのですが、多面体としての人間の良くない面が今も時代を越えて存在する。そういった意味で終連は警句でもあるでしょう。歴史社会学。「静間史観」とでも言いましょうか。通史的にも大変参考になりました。佳作です。
評のおわりに。
さて、3月。
じっとカレンダーを見ます。
3/1が日曜日。
2/1も日曜日。
(それがどした)
2月の日数が半端だった偶然です。
(それがどした)
もうすぐひな祭りです。
では また。