評ですね。2月13日〜16日ご投稿分 雨音
「どっちも」じじいじじいさん
じじいじじいさん、こんばんは。大変お待たせしました。
とても優しい情感が伝わってきました。この詩は、「シンシン」と「フワフワ」という対照的なオノマトペを軸に、雪の降り方の違いをやさしく描きながら、「違って見えても本質は同じ」メッセージを伝えています。音の選び方はとても的確で、雪の気配が自然に立ち上がってきます。全体として穏やかで親しみやすいですね。「わたしはゆきがすき」という結びにも現れているようにとても素直な作品です。佳作一歩手前です。完成度は高く、佳作にかなり近い位置にある作品だと感じました。
語り手はひらがなで子どもの言葉を使っていますが、とても整理されています。子どもの思考特有の揺らぎや気まぐれさ、もっというと意外性、そういったものを加えてみるのはちょっと難しいけれどいいかもしれませんね。じじいじじいさんの素敵なメッセージ「ふっているすがたはちがうだけ」という一行が、大切な届けたいメッセージだけに読み手に価値観の方向づけをしています。ですから読んでいる子どもたちはとてもよく整理された道を歩いている、そんな感じかもしれません。もしも、じじいじじいさんが「子どもの目線でわかりやすく優しく日常からそういったメッセージを送りたい」という目的をお持ちだとしたら、誠実に正しく成立しています。
もしも、子どもたちの目線にもっと近づけていくのでしたら、詩の中に遊びや無駄を取り入れると良いかもしれないですね。
「トルソー」上原有栖さん
有栖さん、お待たせしました。今日は暖かかったですね。
この作品は本当に素敵ですね。読み始めてすぐに、美術室の空気、鉛筆の乾いた音、時間に区切られた集中の張りつめ方が、はっきりと思い浮かんで自然とうっとりしました。クロッキーはほんの短い時間ですが、その短い時間の中で、少女の内面に芽生える感覚が、さりげなく重ねられていて巧みでした。クロッキーを選んだこともすごく良かったと思います。
とくに、美術室という小さな空間がふっと反転するような印象を受ける箇所もあり、観察する目から触れたい衝動へと移ろう心の動きが、説明されることなく、淡々と、けれどはっきりと伝わってくることで、この作品に足を絡め取られるように一瞬この空間にいるような気持ちになりました。
「首から上がないから/驚くほど大胆になれる」はとても鮮やかです。少女らしい未分化な感情をさりげなく描いていて、最後の一行も余韻を残していきました。
佳作プラスです。動く絵画を見ているようなそんな不思議な感覚に陥りました。
「電子化の帰り道」荒木章太郎さん
荒木さん、こんばんは。お待たせしました。
佳作です。とても密度が高く、引き込まれました。新宿西口という具体的な場所から始まり(ざわめきが聞こえてくるようです)、電子化という現代的な行為を通して、肉体・記憶・信仰・思想という構成が無理なく自然に展開していきました。構成がお上手ですね。老朽化した肉体の立て替え工事と都市の再開発を重ねていることに、ほんの少しくすりとしながら妙に納得しました。時間の蓄積と切断が同時に進行する感覚が鮮明でした。聖書や聖霊という神聖なものさえもが情報に置き換えられる感覚も、実感として描かれています。最後の「神様がいた頃のほうが汚れていた」や涙の結びも、静かな余韻を残します。AIが隅々まで行き渡る世界で、見えない何かが忍び寄ってくるような感覚、きっと多くの方が持っているはずですし、そういった気持ちとも重なって読ませていただきました。
一方、豊かな世界観ゆえに、どこに立とうか、と視点を少し迷う瞬間もあります。荒木さんの明晰さゆえなのだと思います。どれか一つをわずかに際立たせるだけで、全体の輪郭がさらに鮮明になって、読者はよりこの世界を楽しむことができそうです。たとえば「電子化」に回帰する、あるいは「祈る」「捧げる」の位置を整理するなど、ごく小さな調整で十分だと思います。少しやってみてくださいね。
「何もない夜に」相野零次さん
相野さん、こんばんは。今日から3月ですね。
佳作半歩手前です。この作品には、静かで確かな誠実さがあります。「今日もこれといって何もなかった」という冒頭の一行は、飾りのない率直な言葉ですが、とても多くの人の胸に届くことが容易に想像できます。「時間が鉛のように身体に絡み付いていく」という感触もまた、その重さに共感を感じる方も多いはずです。
詩の核になっているのは二連でしたが、この配置もとても良いですね。日常から始まり、静かにどこかで起こっている虚しい戦いにつなげています。何もしない「僕」と、世界で絶えず起きている愛・誕生・殺戮・死を並べて無力感と対比させていますが、あえて、何もなかった=日常の自分からの距離感のある視線が、その虚しさを深めつつ、淡々としていてとても良いと思います。
ここから結びにかけてはとても率直になり、「無条件に降伏する」「感謝します」「神様に祈ります」という部分は、その率直さゆえに心の残ります。仲間を求める声も、押しつけがましさは感じられず、むしろ暖かく人間らしいです。
半歩手前の部分はほんの少しのことです。三連から四連のつながりが少し淡泊に感じられました。具体的なイメージが一つ加わると全体の流れがとても良くなると思います。
「友」多年草さん
多年草さん、お待たせいたしました。良い日曜日でしたか?
こちらの作品は日常から生まれてくることが何より素敵です。参考書の染みやゴミ箱の空き缶など、そういった日常の断片に貴方を見つけることがとても優しく、その気持ちが鮮やかに感じます。そばにはいないけれど、共に歩む気持ちで、という乙女心は愛らしくて、慈しみがあります。日常の視点ですが、実はとても意外性もありました。「染み」とか「空き缶」ってどちらかというと生活の匂いを感じさせるのですが、それがこんな風に甘酸っぱい感情を引き出したことです。ラストシーンは「灰色の雲」や「冷たい風」に対比させるように「そよいでいる」という希望を感じさせる言葉が加わって、なんだか力強く、良い最終連になっています。
このままでも十分素敵ですが、視線の繋ぎ目をほんの少し意識してみると良いかもしれません。三連ですが、誰かの跡と同じ跡、を指でなぞるような場面が入ると、行為として共に歩む気持ちを重ねる暗示となり立体感が増しそうです。そのことで、気持ちの深い部分に読者を誘うことができるような気がします。佳作半歩手前です。
::::終わりに
また心が痛くなるようなニュースが聞こえてきました。
こんなに平和を祈っている人が多いのに、悲しいですね。
それでも祈らずにはいられません。世界中の人が安心して眠れる日がきますように。