パックの中の平穏 ゆづは
透明なプラスチックの蓋ごしに
斜めにライトが差し込んで
秩序正しく整列した
サンドイッチの断面を
宝石のように照らし出す
ふわりとした
柔らかな薄い層の下には
黄色いタマゴ
鮮やかな緑のレタス
真っ赤なトマト
外見は似ていても
一口かじれば
みんなそれぞれの季節の彩りと
違った雨の匂いがする
ハムとチーズが仲良く重なり
マヨネーズが
バラバラな具材を
優しく繋ぎとめる
時折 ピリリと辛い
マスタードの程よい刺激
違うもの同士が密着して
一つの「おいしさ」という
調和を作り上げていく
ひんやりとしたパックの中
お互いの角を潰さぬよう
それでいて
体温を失わぬよう
隙間なく寄り添って
蓋を開けた瞬間に
誰かを
微笑ませるために
その手に取られるのを
黙って待っている
私たちは
このパックの中に詰まった
密やかな知恵を
まだ
知らないままでいる