2022/9/13(火)〜2022/9/15(木)の感想と評になります。
柿 妻咲邦香さん 9/13
今回は評というより感想になりますかね。
一連、まだ青い実が自身の短命について匂わせ言っているようですね。二連、三連では語り部が青い実にとって冬が来ることが、大事な話とわかっているけど、あんまり気が進まないが聞いてやっているという様子が目に浮かびます。それでも、そこには薄らと慈悲みたいな感情があるのでしょう。そして、それ以上の感情移入をせず、青い実の明日かもしれない話を距離感を保ちつつ聞いている雰囲気が上手に表現されています。
いつもパンチ力のある妻咲さんですが、今回はボクシングでいうとジャブがなく、相手を揺さぶることができずストレートも効いていない状態のようです。青い実の語る口が止まらない話の内容をもう少し聞きたかった気がします。短い詩は短いほど難しいようです。
評価は「佳作一歩前」です。
ソラという名の宇宙 カタコトさん 9/13
初めましてカタコトさん。齋藤と申します。何卒、よろしくお願いします。
寂しがりやさんが空を眺めているかな、と拝読しました。誰かも見ていればいいのになあ、なんて思っているのでしょう。私は電車内から朝日を見ている時、周りにいる知らない人にほらほらあれ見てみなよ綺麗だよねえ、なんて教えたくなることありますね。そんなことを思い出しながら……。こちらのソラは作品として皆さまに拝読(誰かが見ている、読んでいる)されていることをでしょう。そして題名が一連の上に大きく広がる宇宙として綴られているのが、とてもインパクトがありますね。作品には宇宙的なイメージはないのですが、全体の綴りを絵として見たらアリかもしれません。ソラを眺めている心情が上手に表現されています。また「そうしている」という言葉を挟み構成され詩的な感じがとても出ていると思います。いろいろ作品の言葉を組み合わせて他にも構成できそうですね。
そして
鳥がとんでいる
そして
ただ雲がある
そして
ぼくが見ている
そして
ソラと宇宙の境目を
あなたも見ている
(ああ、これ隣に誰かいますね)
ちょっと遊びながら作品を膨らませてみてもいいかもしれませんね。またのカタコトさんの作品を楽しみにお待ちしております。もう少し長めの作品を希望っ。
みじかいなつ じじいじじい さん 9/14
トンボのぼくとひまわりのお母さん、夏の親子という設定がとてもユニークでいいですね。トンボが飛び始めて描き出される「みじかいなつ」、季節が変われば消えていく生き物の刹那、自然の摂理をあらためて感じる作品になってますね。
こちらの作品、ボクが弱りそしてさよならをして、ママがボクを忘れない、といって括っています。この中で、僕の辛い状態をママが包み込む優しさがとても感じられていいですね。ただ、欲をいえばお子さんへ伝える作品なら、このふたりの楽しかったエピソードを入れることにより別れの辛さがもっと伝わり、ママとボクとの愛の深さも感じられた気がしました。また、これは個人的な意見になると思いますが、ママはひまわりなのですぐにボクのことを追って空へ向かいますので、ふたりの「みじかいなつ」として、空の上でまた出逢えたらもっと素敵な話になるかな、と。
会話している文と語り部の文が同じ連で混同しているところは、連を分けた方が拝読しやすいと思います。あと会話文で、い抜き言葉とそうでないところがありますので統一されてください。
じじいじじいさんの場面を伝える技量はピカイチです。きちんと説明をしながら語る手法もバッチリ。詩へのカロリーも高い。どんどん書き続けてください。
評価は「佳作一歩前」です。
起源 みかめ さん 9/14
初めましてみかめさん。わたくし齋藤と申します。何卒、よろしくお願いします。今回は感想を書かせていただきます。
海は人の喜びと悲しみしか知らないと思っている少女が、海に話を聞こうとすると言葉はなく月光が散りばめられていたんですね。そこで、少女が愛を知る。この海面の反射光を見てなぜ愛を知ったのか、ここは読者がぐるぐると発想を巡らせ作品を完成させる構成になっています。個人的にはこの少女が喜びや悲しみ以外の感情を海は知っていることに気づいたのかと思いました。そしてこの時点では喜びや悲しみのない少女が、自分の平穏にある幸せみたいなものに気付かされて、愛を知ったのだろう、なんて拝読しました。
詩人から旅立った作品は、その世界で楽しませてくれますね。ありがとうございました。
またのご投稿を楽しみにお待ちしています。欲を言えば、もう少し長めの作品を拝読させていただきたいですね。
剪定 Lisztさん 9/14
こういう作品を拝読しますと、「ああ、日本人に生まれて良かったなあ」なんて思いますね。日本人でなくとも花木を大事に思う人々はもちろんいると思いますが、「切る」「剪る」のニュアンスを感じたり、八百万の神ではないですが、生き物や物にも敬う精神があるというのは、人間としての最高の豊かさなんだろうなあ、と感じます。
そして、そのような心持ちからこちらの作品では花木の声が聞こえてくるから、といったお話もたいへん素敵に思い拝読させていただきました。Lisztさんの優しさの滲み溢れている作品ともいえましょう。「剪定」がとても楽しそうですね。素敵な休日です。
評価は「佳作」です。
憂世 山雀詩人さん 9/14
休日の海に飛び込んだんですね。労働から解除されネガティヴ憂世から、ちょうとポジティブ傾向のある浮世への沈まないベットでの至福なひとときを共有しながら私は、ふとんの中で拝読しタブレットにワープロ機能に評を打ち込んでいる次第です(しっかり机に向かってやりなさい、と言われそうですが、私もぷかぷかとこちらの作品を楽しみながらで失礼します)。
ひとことで言うと「分かる〜その気持ち」って感じです。死海を想像されながら、この浮かんだ様子を上手に伝えていると思います。塩分が強く魚も住まぬ湖と誰もいないこの部屋(「誰も住まぬ我が憂鬱」この表現がいいね、ですね)と似ていて、この意味なさ加減がいいんじゃないの! 的な表現も面白く拝読させてもらいました。最後から二連目の「涙こらえて浮かんかね」の歌を詠むような流れも良かったのですが、「涙こらえて」の言葉で気持ちが振り出しに戻ってしまった感じがちょっと残念だったかな、と思いました。話の流れが吹っ切れて楽しんでいるようだったので……。タイトルが憂世そのものではなく、そこからどこへ向かっている作品のようなので、浮かんでいるイメージを付け加えると良いでしょう。
評価は「佳作」です。
ブルームーン hikikoさん 9/14
寂しさや孤独から大人になれない哀れな感情を詩へ具現化された前回の「人と人形」。今回は人形が月になり、今の自分(もしくはあなたという人物)をどこかへ連れさってくれる救いというか、快感みたいなものがあるのかな、と思いながら拝読しました。「26%の魔術」は亜酸化窒素、酸素濃度のことだろうか、いずれにせよブルームーンは陶酔させてしまうようですね。幻想の世界には何か、誰か、の姿を見ることができるらしい。それは癒しなのか、救いなのか、完全な愛に続いているのだろうか、といろいろと想像しながら拝読できる作品でした。「奇跡的な出会い」「完全な愛を願う」と「あなた」へのメッセージになっている。語り部がもしかしたら「あなた」の奇跡の人でGODなのかな、なんて想像してみますと壮大な気分になり拝読できる作品ですね。
最後の二連で、目が覚め、締めの言葉で切れていますが、ここをもう少し丁寧に繋ぎ全体を包括できていれば最高だと思ます。ご一考くださいませ。
評価は「佳作一歩前」です。
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