3/3〜3/5 ご投稿分の感想と評です 荻座利守
3/3〜3/5 ご投稿分の感想と評です。宜しくお願い致します。
なお、作者の方々が伝えたかったこととは異なった捉え方をしているかもしれませんが、その場合はそのような受け取り方もあるのだと思っていただければ幸いです。
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3/3 「パックの中の平穏」 ゆづはさん
透明なプラスチックパックに入ったサンドイッチ。コンビニやカフェなどでよく見かけますが、そんな日常の一コマを繊細な感覚で描いた作品ですね。
柔らかなパンや、卵、トマト、ハム、チーズなどの具材の新鮮さが目に浮かぶようです。日常の片隅にある小さな幸せが詰まったパック、という印象を受けました。
表現としては、
「バラバラな具材を
優しく繋ぎとめる」
というところが、マヨネーズの役割をとても上手く表していると感じました。また、
「お互いの角を潰さぬよう」
「体温を失わぬよう」
という擬人化した表現も、ほんのりとした温かさを感じさせます。
そして最後に、「このパックの中に詰まった密やかな知恵」については、詳しく書かずに終えています。これは読み手にその知恵とは何かを考えさせ、日常の中にある小さな幸せに目を向けさせる効果を生んでいると思います。
ただこの「知恵」と言う言葉は、サンドイッチの作り手の存在を思い浮かべさせもします。ですから、その作り手の想いや優しさ、といったことに触れてもよかったかもしれません。しかし、サンドイッチそのものにフォーカスしたいのであれば、それは余計なものという見方もできます。それは人によって見方が異なることなのでしょう。
評につきましては、少し迷うところですが、今回は甘めに佳作としたいと思います。
3/3 「再燃」 小林大鬼さん
現在の世界にある戦争を批判的に描いた作品ですね。
本当に、一体何度同じことを繰り返せば気が済むのか、歴史から何を学んでいるのか、と言いたくなります。タイトルの「再燃」とはそのような意味も含まれているのでしょう。
「感情の渦が世界に感染する」
全くその通りで、理性よりも感情が優位になって、それに振り回されているようにも見えます。
このような戦争や紛争では、子供や高齢者、障害者などの社会的弱者が最も被害を被るようです。戦争を引き起こす人々には、そのような人たちへの視点が欠けているのではないかなどと思ってしまいます。まさしく「国家が人を駒にする塵になる」です。
また、末尾にある「無常な現世」という言葉から仏教の教えを思い浮かべました。自らの内に燃える煩悩の炎を消して心を静める。
「人々よ
怒りより嘆くより沈黙せよ」
というところは、そのような意味も込められているのでしょうか。
ただ、詩としては全体的に、比喩や対句などの表現技法がやや不足しているような印象を受けます。例えば、タイトルの「再燃」を消し止められていなかった燠に喩えたり、怒りに叫ぶ人と悲しみに泣く人とを対比させたりしてみてもいいかなとも思いました。
でも、詩人としては、この惨状に何かしら言葉を発しなければならない、ということもあります。
世界の人々が、理性と慈悲と平和を目指すようになることを祈ります。
評につきましては、佳作一歩手前としたいと思います。
3/3 「ユニバーサル//コミュニケーション」 松本福広さん
まず一読してみて、とても面白い内容だと感じました。
1連目の導入部から察するに、この作品は、「障害」という言葉の表記方法に関して、さまざまな意見があることがきっかけとなって書かれたもののように思えました。
「『言葉を多くすれば伝わる。』という偽物の神話」という表現が鋭いですね。「伝える」ということは「伝える人」と「伝えること」と「伝えられる人」がいて成り立つことです。私たちは「ちゃんと話せば伝わるはずだ」と思っていますが、確かに相手が何を知りたいかを分かっていなければ、伝えるべきことは伝わりません。
そして、「主体の矢印はどこを向いているのだろう。」ということも大切ですね。やみくもに矢を放っても的には当たりません。伝えたい内容から、伝えるべき相手を正確に見定めなければなりません。
また、「障壁は営みの中で、偶々そこに道が出来たから障壁だと呼ばれただけなのかもしれなくて。」というところに、ハッとさせられました。まず道があってそこに障壁が立ちはだかっているのではなくて、新たに道ができたからこそ、そこに在るものが障壁とみなされるのですね。そうして新たに障壁とみなされたから、それを越えるための新たな概念も必要となるけれど、人の思考がそれについていけない、ということはよくあることなのでしょう。
ただ、ロボットについての記述は面白いのですが、ここは人間との対比(あるいは比喩?)であることは明らかなので、「人間に似ている。」あえてが書かないほうが、詩としてはより面白いのではないかと感じました。
でも、排水溝の比喩や地球を知りたい人の例えなど、全体的にウィットに富んでいて、とても面白い内容でした。
評につきましては、佳作としたいと思います。
3/3 「ちちんぷいぷい」 aristotles200さん
身の丈5mとは、けっこう大きなロボットですね。そんな大きなロボットが、振り向いても姿を見られないほど素早く動く、というところが、何かこの世のものとは思えない雰囲気を醸し出しています。また、何もしないでただ見守っているというのが何だか健気な感じでいいですね。特に、
「人のいない森を歩いていると
すぐ、後ろで
落ち葉を踏みしめる音がする」
という描写が、目には見えない同伴者を感じさせて、仄かな温もりを感じさせます。
そして、このレトロな見た目のロボットが、実は自分が子供の頃に描いた絵のロボットだった、という展開がとても面白いです。
よく転んで迷ってばかりの子どもを心配したお母さんが、絵のロボットにこの子を守ってと魔法をかける。「ちちんぷいぷい」というタイトルには、そんな母の愛情が込められていたと思うと、とても暖かさを感じます。
さらに、書き手の息子が生まれた朝に、そのロボットが消えたということは、「今度はあなたが魔法をかける番ですよ」と言っているかのようです。
ただ細かいことを言うようですが一点だけ。「ある日/ロボットが消えた」というところは、子供の頃の思い出の場面から現在へと戻ったところのようですので、そこの前にもう一度アスタリスクを置いたほうが、読み手にはわかりやすいと思います。
でもこれは些細なことで、全体的に暖かな雰囲気を持つ詩で、とてもいいと思います。
評につきましては、佳作としたいと思います。
3/4 「わたしが好きになったのは」 上原有栖さん
好きな人に告白するのは、とても勇気の要ることですね。その好きになった男性が「太陽みたいな人」だったけれど実は本人は雨が好き、というところに新鮮さを感じました。また、
「少し掠れた声が
耳に残って心地よい」
というところに、「好き」という実感が込められていていいですね。さらに、
「しとしと降る雨の日が
読書をするのに
丁度いいのだという」
というところは、確かに言われてみればそのとおりだと、納得しました。本が好きな人は雨の日が似合うような気もしてきます。
その後の告白する場面も、その心情がとても上手く表されています。そして、この詩の白眉は何と言っても、
「あのひこうき雲が長く残ったら
わたしとお付き合いしてください」
という告白の言葉ですね。
初め読んだときは何のことかよくわからなかったたのですが、末尾の解説で意味がわかりました。
雨の好きな人へのひねりの効いた告白の言葉。ここはとても秀逸だと感じました。
ただ欲を言えば、
「あなたはわたしの知らないことを
たくさん知ってる」
の後に、それについての心情(例えば「私の世界を広げてくれる」みたいな)を入れたほうがいいような気もします。
しかしそれは些細なことで、それがなくても十分作者の心情は伝わってきます。末尾の
「じゃあ 帰りは相合傘で帰ろうよ」
も、とても微笑ましい締めとなっています。
評につきましては、佳作としたいと思います。
3/4 「星の光り」 喜太郎さん
自分自身のことを、付き合っている女性の視点から描いた詩、という印象を受けました。
宇宙的な視点で、この地球を観測している異星人がいても、そこに地球の光景が届くのは何万年も経った後のこと、というところから、今ここにある自分たちの幸せに視点が戻るところが巧みだと感じました。その光が到達する時間が、
「今の二人の今日が
とても幸せで 楽しかった一日が
すごくすごく……
光の速さの様に感じた」
という想いに繋がるところがいいですね。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。その過ぎかった時間を、
「どこかの星の空の上で光ったのなら
同じ様に感じてくれる
誰かがいたら 嬉しいかな」
という感覚に持っていくところも秀逸です。
そしてまた、付き合っている女性の
「せっかくのあなたの自尊心
受け止めてあげましょう」
「あなたは相変わらずのロマンチストですね」
といった、やや覚めた見方もアクセントとなっていていいですね。そうであってもそんな「あなた」が、「それは想像を超えた突拍子もない世界観に私を連れ込んでくれるから」好きだという点に、詩人の存在意義が示されているようにも感じました。
ただ一点だけ。最終連で、それまで男性のことを「あなた」と呼んでいたのに、そこで突然「彼」に変わっているところが、やや不自然にも感じられます。ここも「あなた」で統一したほうがいいのではないでしょうか。
それでも、二人でいる時間をできるだけ長引かせようと、遠回りして帰るところはとても共感できます。タイトルの「星の光」には、そんな幸せな時間が込められているのでしょう。
評につきましては、佳作半歩手前としたいと思います。
3/4 「僕の舟」 相野零次さん
この「舟」とは、自分の時間や人生を表しているのでしょうか。その時間を大切な人と共に、そして、その人のために過ごしてゆきたい、という願いを描いた詩という印象を受けました。
「僕の舟が雲ならば
朝、君を美しく照らすだろう
夕陽に君の寂しさを背負って
その声に耳を澄ますだろう」
というところは、その人を大切に思う心情が繊細に表されていて巧みだと思います。また、
「輝く星が全て涙なら
僕は喜びも悲しみも全て受け入れるだろう」
という表現も優しさに溢れていて美しいと感じました。
また、「僕の愛が君の隙間ならいいのに」というのは、「君」の心の隙間を、「僕」の太陽のように暖かい愛で埋めてあげたい、という想いを表しているようにも思えます。
ただ欲を言えば、末尾の「星座」と「輝く星が全て涙なら」との関連について、何らかの表現があったほうがいいのではないかとも思います。(例えば「幾多もの涙の星が集まって、美しい優しさの星座となるように」みたいな感じで。)
でも、最後の「君だけをつれて旅にでる」というところは幻想的で美しく、全体的に深い慈しみを感じさせる作品だと感じました。
評につきましては、佳作一歩手前としたいと思います。