夢路 上原有栖
久しぶりに夢に『先生』が出てきました
━━━先生、お久しぶりです。
何年振りでしょう、お元気ですか。
少し老けましたね。
わたしが話しかけると
目尻に皺を寄せて
彼は笑いました
切り揃えられたグレイ・ヘアが
春風に靡いています
短く整えられた襟足は
いつも身嗜みを大事にしていた
貴方らしい
━━━━先生、わたしも良い齢(とし)になりました。
朝は夜明けとともに目覚めます。
あんなに、寝坊助だったのに。
向かい合い時間を過ごした
あの教室では
今でも
知らない他人(だれか)が
同じ関係性を組み立てているのでしょう
貴方は
教えを乞うた『恩師』
相談に乗ってくれた『友人』
護ってくれた『父親』
そして『尊敬する人』
やってくる春を幾度も迎えるたびに
青二才だった若造も
あの日の先生の顔に似てきました
朝の太陽が昇ると
夢から醒めた
街と人が呼吸をはじめます
今日届いた郵便物のなかに
貴方の訃報を知らせる葉書がありました
鈴蘭の花が咲き始める
四月初めのことでした