評、2/27~3/2、ご投稿分。 島 秀生
思うんですが、
戦争に「勝った!」はいらないんじゃないですかね。
「勝った!」と言いたい国のそのプライドが、
いつも戦争を長引かせているような気がしてならないんです
●上原有栖さん「暴動の夜に」
1~6連までは引き込まれるように読みました。
暴動に加わるいろいろな人の様子がよく書けているし、とりわけは、まだ未成年らしき若者が、高揚しながら初参加していく様子や、逆に家族の中でも止める者がある様子は、とてもリアルで。読む者をぐいぐい引き込んでいく、すばらしい書きっぷりでした。
ただ、古くは一揆や米騒動に始まる、圧政への不満、国や行政府への不満というより、魔女狩り的な、あるいは他のムラや、隣接する他の民族の居住地を対象にしてるような、なにか地域内トラブル的な匂いで読みました。
「燃えあがる松明」や最初からエモノを持ってケンカモードなのが、そう感じさせたのかもしれません。「見えない敵」ではなく「見えてる敵」との戦いモード、より肉迫感を感じた故かもしれません。
「革命」というより、やっぱり「暴動」的な感がしました。まあ、「暴動」というタイトルで、きっと特定の事柄を指しているものではなく、煽動されがちな、危険な集団心理みたいなものを主題に、描こうとされてるんだと思います。
もっといえば、この「暴動」を例に、今のイランとの戦争状態を、「この世界は醜いわ」というアイロニーに仕立ててるのかもしれません。
あるいはエリア内トラブルの要素から考えると、外国人差別へのアイロニーかもしれません。ちょっと演劇的な異化効果の手法も感じさせます。
さて、気になったのは、7~8連に関することです。
最も気になった点は、「ぬいぐるみ」が2回出てくることです。「一緒に寝ているぬいぐるみ」と、終連で外に落ちている「焼け焦げたぬいぐるみ」です。2回出てこられると、両者の関係性の意味がどうしても気になってしまいます。
そもそも外にあるのは、ふだん「一緒に寝ているぬいぐるみ」と同一物で、それがいつの間にか、焼け焦げて外にあることで、何かを象徴してるのか。いや、これは別物で、別途、犠牲になった別の子供がいることを意味したいのか。
しかし犠牲になった子供だけを意味するなら、ふだん「一緒に寝ているぬいぐるみ」の方はややこしくなるので、ない方がいいとも思えるし、
解釈として、いろいろ発生してしまうので、ちょっとこれは不用意に2回出したな、という感を持ちました。
7連目の2行目は、「旧市街」との距離感を作りたいので、「とおく旧市街の」とか「川むこうの旧市街」とか、ちょっと入れたいね。
8連は少し時間経過を持ってはどうでしょう?
極端な話、朝になっても二人は帰って来ず、焼け焦げたぬいぐるみが落ちていた、とした方が、ぬいぐるみもより意味を持ってきますし、ドラマの最後らしくなります。私は7連との連続時間にしない方がいいと思うのだけど。
終連の決めセリフは別途として、現状の7~8連で、話がうまくシメに行ってないのが、ちょっと気になるんです。6連まではバツグンだっただけに。
なので、以上の点、考えてみて下さい。
おまけの名作にします。
●aristotles200さん「プレパラート」
宇宙ができたのが138億年前とされていますが、138億光年より先の、外側の世界を一瞬想像させてくれるような、壮大さが3連にあって、そこはちょっとおもしろかった。(ここはのちに物理的な距離ではなく、認識の話であるというふうに変わりますが)
また序盤の「透明な殻」という表現で、いまいち映像的にピンと来てなかったが、4連の「ビーカーの中から外に向けて透明な壁を叩く」の表現は良かった。ここでイメージがくっきりとなったし、これがあとの空中ひび割れシーンのガラス感とも、よく合いました。
終連は、ここで初めてプレパラートが出てくることもあり、そうした人間の行動もまた、神的な存在により、観察されているものであるという、どんでん返しなのかな?と思って読みました。
うーーん、悪くはないんだけどね。ある意味、話の展開が多すぎたために、話のスジだけ追った感になり、どっち方向にもイマイチ深くなれなかった感じがする。
とりわけ「認識」のところが本命なんだろうから、意識の解放がどういうものか、もう少し内的に踏み込んでくれても良かった気がしました。
ストーリー展開自体、おもしろいのはおもしろいのだけど、本命部分の厚みが足りない気がした。むしろ終連は削除で、その前からの流れをそのまま深めて終わりにしても良かったかもしれません。
秀作プラスを。
●松本福広さん「破線」
破線をモチーフにした、テクニック先行なのが、見え見えなので、そこがちょっとなあー
でもまあ、よく思考を展開させました。努力賞の秀作プラスを。
なかなかよく粘ってて、松本さんの力量の高さがよくわかる作品ではあります。(感動はないけどね)
これ逆に、最初からこれに、テーマが決められてて書いた作品だとしたら(そういう形の作品募集がある場合もあります)、よく書けていて、凄いと思うんです。そういう意味で評価しておきましょう。
全方位の努力は認めるけど、いちおう言うと、ストーリー優先+いいとこ取り でまとめる手もありますよ。
今日は何もしない一日
時間を消費した感覚だけが
部屋に落ちていた。
それはそれで楽しかったような
でも気持ちが沈む日曜日の夕方。
滞っている仕事を思い出した
繋がったり途切れたりが繰り返される
破線のような日常
積み重なった年月
強く印象に残ることはあるけれど
過ぎ去った記憶を振り返ろうにも
記憶は途切れ途切れ
元は実線だったはずだが
磨り減らされてゆく
破線の人生
不均一で 不平等な 破線しか引けない
点線 鎖線かもしれない。
不規則に 形を変えながら刻んで行く
ただ 時 だけが
確実に刻まれる
直線に伸びる実線、
今ここにある、絶え間ない直線の流れだけが
最期の時へと引かれている
流れてくるSNSのタイムライン
日常で目にするものを 無意識に選んでいる
人類の歴史が 戦争と平和の 破線で続くように
平和への祈りですら 破線なのかもしれない。
でも私たちには 日常があるのだから。
空白 に広がる泉を跨いで行く。
着地する踵は
次の線を書き出す 頭の点だから
空白を跨ぎながら 線を刻んで行く
こんな感じ。この方が、ちょっと一段、上にあがってる感じがしませんか??
●じじいじじいさん「ふしぎ」
先に言います。2連2行目の「ゆきのような」はNGです。
ゆきを表現してる時に、とりわけ、ゆきを他のものに喩えようとしてる時に、「ゆきのような」と言っちゃうのは自爆ものです。
次に、子供向けといえど、いや子供向けなればこそ、コンセプトを明瞭にすべきなんです。
「雨」と「雪」は、溶けたら同じ水で、はっきりしてますが、
雪と、あられや雹との違いなら、まだしも形がはっきりするでしょうけど、
「フワフワ」と「シンシン」て、本来、「降り方」の違いの話であって、雪の「かたち」の違いって、述べられますか? 明瞭なものですか?
せいぜい、
おでこやあたまにのっても フワフワしてる
おでこやあたまにのると とてもつめたい
こういう感覚的なもので精一杯だと思いますよ。
なので、3連において、「かたち」でもって論じてるとこも、違うと思うんです。
さらには2連おいて、1連の「フワフワ」とは、「シンシン」がこう違う、という表現をしなければいけないところで、4行目以外は、その目的を達してる気がしない。連全体としては、違いが不明瞭で、目的を達せられてないです。
2連で、違いをきちんと述べられてないのに、3連ではまるで「雨」と「雪」の違いみたいに、当たり前のごとくにしゃべってる。ものすごく強引なロジックだと思いますよ。
正直、ここは「雨」と「雪」の話に、すり替わってしまってると思いますよ。
まあ、最初の段階で、感覚で書き進めるのはかまわんのですけどね、推敲の段階で、ロジックチェックはして下さい。
理想的にはロジックを承知の上で、それを超えるような感覚を見せてほしいんですが、これはまだロジックの手前にいます。
一歩前です。
あ、初連は、気合いが入ってて良かったです。そこは、お!と思いました。