黒の無い世界で 喜太郎
ただ君には
白が似合う気がしたんだ
白いサラサラな髪
白く柔らかな肌
白く澄んだ瞳
そして白く細く長い指
そんな君には白い世界が必要なんだ
ビルも道も行き交う人たちも
白く白く白くなくてはならないと願った
そんな世界の中で君を照らすのは
青空に白く輝く太陽
ビルにも行き交う人にも
君の白くしなやかな髪にも
細く長い白い指にも
光は白を際立たせる
だけど………
黒い影が生まれてしまった
真っ白だった世界
空と大地の境界も分からない
行き交う人も見えない
何より君自身もが見えなかったのに
影が全てを露わにしてしまう
僕の瞳に映る白の中で生まれた君は
僕の心の中で思うままで生きてきたのに
姿形が露わになった時
白と黒の狭間で僕の瞳は
ただの黒い瞳に戻って
そこには白い君はもう居ない
消えてしまった
白が全てだったのに
雪解けの都会の様に
灰色の汚れた世界
俯き目を閉じれば
黒しかない世界
そこに白い君はいない
いくら思い浮かべても
黒い世界に飲み込まれてゆく
もう二度と会えない
夜がくれば黒くなり
日が昇れば影がつきまとう
できる事なら
あの白く長く細い指先で
僕の目を突き刺して欲しい
そこには白でも黒でもない
赤が流れるだろう