ひとり 江里川 丘砥
ひとり
わたしが
この世に生まれ
ひとり
だれかが
この世から消えた
たましいは
揺れる水面のきらめきのように
南の空高くのぼる太陽のように
ひとりでにかがやく
こころは
北極星のような道標を
シリウスのような白く強い光をもとめて
重たく靄のかかる空気のなかを
ひとりで浮いている
かなしみは深く
ひとりぼっちになっては
柔らかな木漏れ日のやさしさや
雪原にきらめく光のうつくしさなど
忘れてしまいそうになる
ひとりうたをうたうのは
かなしみがこころに溜まるから
やさしい旋律とことばが
かなしみをかきだしてくれるから
ひとり風に吹かれて
丘の上まで歩く
広がる景色に洗われて
風に向かって笑えるまで
ひとり
わたしがいなくなるとき
この世界は変わらなくとも
誰かのこころは痛んでしまうのだろう
ひとり
あなたがいなくなると
わたしの世界はこんなにも変わったのだから