三番目、四番目 人と庸
カラフルな氷砂糖のような灯りが水平方向に流れていく
それを見たくないから目を閉じていると
三を四に感じたり
四を三に感じたりするので
目を開けるといつも見当違いの駅に降り立っている
あわてて逆方向の電車に乗るが
そこでも乗客はみな同じ顔
しくじったわたしを
責めもしないしあわれみもしない
久しぶりの電車通勤なので
わたしはすっかり作法を忘れていた
ここでは三番目の顔でいなければならぬ
出発点と
終着点の
ちょうど中間の顔で
定期券をぶら下げた小学生も
もう一人前にその顔を持っている
わたしはまだまだひよっこで
見ているようで見ていない
見ていないようで見ているという
そんな器用なまねができないから
景色も人も見るまいと
目をつむってしまうのだ
ときどきおそるおそる目を開けると
朝日を浴びた家並みのすがすがしい景色や
生活の窓が浮かび上がる深海のような夜の景色が
見られることを期待もせずただ待ってくれている
だめだだめだ
見てはだめだ
慣れてはだめだ
慣れてはこの景色の色が
色とは感じられなくなるだろう
カーブにさしかかり
吊り革は斜めに傾ぐが
我が身は水平に保とうとする
それにかかる力がぎしぎしと
ぎしぎしと音を立て
握る手とふんばる足の緊張が
わたしの三番目を形成してゆく
※ ※ ※
わたしに声をかける者がある
三番目の顔で迎えると
差し出されたわたしの手袋
驚きと その人にかけるべき言葉
その言葉をかけられるべきその人
わたしもその人も
そのときだけは
四番目の顔