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スレッドNo.7021

評ですね。3月13日〜16日ご投稿分  雨音

⚪︎都合によりお先に失礼いたします。

「夢路」上原有栖さん
上原さん、こんにちは。今日は雨が降っています。このしっとりとした空気と上原さんの作品がとてもあっていて、心に沁み込んできました。
この詩は夢の中での恩師との再会という穏やかな情景から始まります。最後に示される訃報によって、作品が先生への上原さんからの追悼であることが明らかになります。
作品全体に流れているのは、尊敬と親しみです。恩師であり、父親のようでもあり、友人のようでもあると多層的に捉えていますが、そこには単なる師弟関係を越えた、人間的な結びつきの深さが感じられました。言葉の端々から、やわらかな愛情が滲んでいます。
時間の推移も丁寧に刻まれています。自分が歳を重ねるように先生も歳を重ね、やがて届いたのは訃報でした。しかしその事実は短く簡潔に示されるのみで、直接的な感情は語られていません。このことがこの作品に深みを与えています。終始、静かでやわらかな調子が保たれていて、それはまるでふわっとした風のようでした。抑えられた表現によって、悲しみの深さや懐かしさが際立ち、豊かな余韻を残します。
佳作プラス。とても心に残る作品でした。

「夢色」相野零次さん
相野さん、こんにちは。お待たせいたしました。
上原さんに続いて「夢」はどんな色を描くのかなと楽しみに拝見しました。
この詩は、「夢」と「色」という抽象的なテーマを、走るという行為に重ねて描いた作品です。「虹の果てへ向かって走るだけさ」という言葉からは、明確な答えが見えなくても前へ進もうとする意志が感じられます。
「わからないこそ追いかけるんだ」「わからないこそ夢があるんだ」という繰り返しは印象的で、夢を定義するのではなく、その「わからなさ」に価値を見出している点に、この作品の核があるように思われます。意味を求めて立ち止まりながらも、それでもなお進んでいくしかないという感覚は、人生の在り方ともどこか重なって感じられます。歩いてきた、走ってきたからこそわかるそんな気持ちです。
夢の到達が死と結びつけられながらも、「早まってしんじゃいけない」と語られることで、生を生き抜くことの大切さが同時に示されています。この緊張関係は、死を特別なものとして遠ざけるのではなく、自然なものとして捉えているからだと思います。
虹色は単なる美しさではなく、多様で定義しきれないものの象徴として描かれています。それらを引き受けながら進もうとする姿勢が感じられました。また、美しい君という存在は、伴奏する他者であると同時に、自分を取り巻いてきたさまざまな出来事の象徴のようにも感じられます。読後には、しっかりと余白を持たせた作品です。佳作です。

「ミモザの余白」ゆづはさん
ゆづはさん、こんにちは。3月8日はミモザの日でしたね。
ちょうど所用で都内のデパートに入ったのですが、ミモザの花を配っていたのです。黄色の明るさに幸せな時間を過ごしました。
この詩は、雨の土曜日の昼下がりという何気ない時間のなかで、外の世界から少し距離を取り、自分の内側へと静かに向かっていく感覚が丁寧に描かれた作品です。いつもゆづはさんの作品を拝見するたびに感じますが、こうした内面の機微を、日常の描写と最小限の言葉によってそっと表現される点に、大きな魅力があると思います。心のひだを過度に語らず、さりげなく織り込むことで、読む側に静かに伝わってきます。「予定をすべて白紙に戻す」という導入から、日常の流れをいったん手放すことで生まれるやわらかな余白が、印象的に広がっていきました。
ミモザの手帖や冷めた紅茶、窓を叩く雨音といった細やかな描写が重なり、視覚や触覚、聴覚を通して静かな時間の質感が伝わってきます。とりわけ「白く塗りつぶした淡い痕」や「そこだけまだ少しあたたかい」といった表現には、過去の気配と現在の感覚が自然に重なり合い、ひとつのやわらかな世界が形作られているように感じられました。
また、外界から切り離された時間の中で、自分自身を取り戻していくような意志も静かに表れています。スマホから古い詩集へと向かう流れも効果的で、内省の時間へと移行していく転換として印象に残りました。終盤では、ひとりでありながらもあたたかな表現が続きます。「ささやかな灯り」や「色とりどりの傘」、「穏やかな雨の音」といった言葉からは、孤独が否定されるものではなく、次へ向かうための穏やかな準備として受けとめられていることが伝わってきます。読後には、静かでやわらかな余韻が残りました。佳作プラスです。

「海猫」荒木章太郎さん
荒木さん、こんにちは。改めて免許皆伝おめでとうございます。
免許皆伝を裏付けるような、たいへん優れた作品を拝見しました。特上の佳作をお贈りいたします。そして、これが荒木さんにお届けする最後の評となります。
この詩は、「先住」と「よそ者(旅人)」という対立的なテーマを軸に、自己の変容と居場所のあり方を探った作品です。北千住という具体的な地名から始まり、やがて個人の内面や社会の構造へと広がっていく大きな構成が印象的でした。
旅人がカモメ、カラス、ハトへと姿を変えていく流れは、環境に適応し安心を得る一方で、何かを失っていく過程を、簡潔な言葉で印象深く伝えています。群れに身を置くことで得られる安らぎと、そのなかで抱える息苦しさの両面が描かれており、作品全体に流れる悲しみを際立たせています。いずれも身近な鳥であることから、読者にとってもイメージしやすく、感情移入しやすい点も効果的です。
また、「先住と移住」が地下でつながりを求め、折り合いをつけていくイメージと、地上での分断との対比も見事です。後半では、「滅びる側を引き受ける」という強い意志のもと、語り手は境界に身を置く存在へと変化します。この選択には、対立のどちらかに属するのではなく、そのあいだに立ち続けながら、自らの居場所を見出していこうとする姿勢が感じられ、ひとつの救いとして響きました。
象徴の連なりによって内省を深め、葛藤や痛みが率直に表れています。最後に再び「北千住の空」へと戻ることで、作品全体がひとつの場所に静かに着地している点も、とても印象的でした。

「その上での話」三津山破依さん
三津山さん、お待たせいたしました。
こちらの詩は、寂しさや悲しさを強く語らず、「知っている」と一言でとどめている導入が印象的でした。「その上での話。」と切り替わることで、感情そのものではなく、日常の中の感覚へと静かに視点が移っていく流れが自然に伝わってきます。淡々とした気持ちと時間の絡み合いに心惹かれ、置かれた余白にほっとするような気もいたします。
鯖をおろす場面や風呂の時間、夜の風とふとした描写の中に込められた感情がやわらかく滲んでおり、さりげないユーモアが加わっていることも魅力的です。日常の手触りを素直に言葉にして伝えている点が素敵です。
今後さらに印象を深めるとすれば、どこか一箇所だけでも少し踏み込んだ具体的な描写を加えてみてもよいかもしれません。余白の美しさはそのままに、作品の芯がより際立つように思います。あるいは、今回のようなさりげなさを大切にしながら、連作のかたちで少しずつ踏み込んでいくのも一つの方向かもしれませんね。
感覚の確かさを感じる作品でした。これからも楽しみにしております。

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桜が咲き始めましたね。
春は大きなスタートを迎える方が周りに増えて、つい頑張りすぎる時期ですが、
自分のペースで健やかに過ごしたいものです。

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