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スレッドNo.7042

おためごかし  Ema

心地よいぬくもりから放たれたとき
どうしようもなく まっさらだった 
 

誰もが
一冊のノートをもって
うまれてくる

めくってもめくっても
未来は雪原のように真っ白で
最果てはどこかわからない

わたしが最初のページにかいたのは
これから生きていくこの世界の
眩しすぎる光と心許ない空気にふれて
ただ泣き叫んだこと

動き出した五感の歯車
最後のページをとじるその日まで
自分だけのたからものを
見つけ続ける旅がはじまった
 
白いページを埋めながら
月日をめくっていく
それは当たり前のようでいて
とてつもなく幸運だった
 
 
物心ついた頃
風変わりなノートをもっている子にであう

カラフルな色づかいで
ページいっぱいに描かれたその子の絵には
黒い線がまとわりついていた
毎日毎日新しい絵を描いて
そのたびに絵にそぐわない線がからみつく

気づく
どのページにもあらかじめ
たくさんの線が引かれている

その後も何人か
罫線入りのノートをもっている子にであう
 
その線の入り方はめいめい違って
薄くて幅が広々している子もいれば
濃くて幅が詰まっている子もいた
 
彼ら彼女らにとって
線の存在は
至極当然のこと
 
 ——ひたすらに
 息をするように自然に
 信仰を吸って吐く
 
線、だと思っていたそれは
細かな文字の羅列
思想
聖典から成る罫線
抗うことのできない絶対善

次第に 
思考は余白に追い込まれ
罫線に触れぬよう
その空白を埋めていく
 
この先 
彼ら彼女らが
たからものを描くスペースは
存在するのだろうか


誰もが
まっさらなノートをもって
うまれてこられたらいいのに
 
白いページ埋め続けた先で
罫線を引くかどうかは
自分で決めること

それはきれいごと?

 
成人を迎えた頃
ノートの線を懸命に消している子がいた
 
これまでのページは消せない
これからのページを白くする
身勝手な大人たちの
都合のよい解釈で
真っ黒に塗りつぶされた未来
染みついた言葉の数々
きれいに消し去ることはできない
積年の痕が
薄ら笑う

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