生活を編む ゆづは
始まりは いつも
終わりを孕んでやってくる
出会わなければ 別れもなく
欲しがらなければ 失うこともない
そうやって耳を塞ぎ
頭の中だけで
純潔な恋を飼い慣らしていた
真面目すぎるほどに 臆病だった
傷つく覚悟を決めてからしか
誰かの体温に触れられなかった
愛の正体を
探し続けた日々を越えて
今では
肺の奥まで呼吸が届く
誰かのために命を投げ出すよりも
ひとときの情熱に
身を焼き尽くすことよりも
ずっと地味で 難しい
大切なことがあった
明日も 来年も 隣にいて
「おはよう」と「おやすみ」の
単調なリズムを刻み続けること
ありふれた晩ご飯を
向かい合って 食べること
かつて その停滞を
愛の残骸だと思い込んでいた
けれど今
この静けさの底に流れる時間にこそ
一番の贅沢が宿ると知っている
もう
完璧な愛など求めない
あなたの欠落と
私の消えない戸惑いを
隠さずに持ち寄って
ただ 途切れない生活を
編んでいければいい
永遠を誓う代わりに
今日という手垢のついた一日を
丁寧に手渡そう
考えすぎる癖は
相変わらずだけれど
今はその重さも
あなたと歩くための
心地よい重力になっている