感想と評 3/20~3/23 ご投稿分 三浦志郎
3/20~3/23
1 松本福広さん 「星のアリア」 3/20
まず、ストーリーを追います。
宇宙の中で箱のような物に納まり、コールドスリープ状態の主人公→彼は自分の惑星が滅びたことを知らない(すなわち帰るべき処はない)→コールドスリープは続くが、病原菌は完全殺菌されている(すなわち彼は治癒する?)→(ところが)生命維持機能が切れると?(これは死を意味するだろう)この詩行群にやや矛盾を感じます。「治るような、死のような」。差し当たり、読み手レベルで推測を付けます。彼はいずれ死にます。なぜならば「棺の中」「十字架」「鎮魂歌」などを、その傍証として拾うからです。ここで次に海が出て来る。ただし、星たちの記述はなお続くので、この「海」は「銀河の深海」などとあるように、実景ではなく、ひとつの比喩と見ておきましょう。
最後、彼はブラックホールに呑み込まれ、解体され、その粒子がホワイトホールから吐き出され終わるのでしょうか?
最後に技術論アプローチからの感想及び評です。各連、もの凄い発想力・想像力・比喩力・筆致力があります。しかし、それらは、ひとつの詩の中での組織力・収斂力とは違います。要は各連、宇宙知識にも支えられながら、それら自体素晴らしいですが、相互に有機的に繋がらず、詩全体のストーリー性、メッセージ性が見えてこないのです。詩的に感想を言うならば「この主人公は何処へ行く、この詩は何処へ行く?」。そのあたりがポイントになる気がします。佳作一歩前で。
アフターアワーズ。
僕は詩にストーリーを持ち込むことに大賛成です。この詩のポイントは”流れのまとめ方“に注力すれば一定の成果があるように思えるのです。研究してみてください。
2 aristotles200さん 「ダンス」 3/20
この詩のキーワード。「ダンス」と「揺らぎ」です。 あとは「対生成・対消滅」です。この作者さんは全面的に人間を肯定しつつ、多くの部分において人間を批判あるいは否定している、そういった同時的な立ち位置を今まで感じてきました。この詩もその範疇にあると感じています。ここに提示された「揺らぎ」自体、人間への肯定であり否定であると思っています。具体的な契機となるのは「対生成と対消滅」です。ここはあまり難しく考えず、互いの物質作用による生まれと滅び、その浮沈などと解釈すればいいでしょう。そういった自然界の法則や節理を「揺らぎ=ダンス」といった動向や運動として把握する。人間も自然界の一員である以上、その範囲にある。それが8連「人間/人間こそ~」です。そして、冒頭述べた作者さんの人間観がここでも顔を出します。人間こそ揺れ、揺らされ、揺らぎの典型か?しかし、そこでは新たな可能性も示唆されるかのようです。繰り返されることの謂いかもしれません。
さて、「*」を挟んでの「存在とは/ダンス!」。いきなり来た感じですねえ。作者さんも変化を意識して「*」を入れたのでしょう。森羅万象を揺らぎといった概念で捉え、ダンスも揺らぎの一形態、一表現です。そういった意味での後半。より人間に分け入っている印象を受けます。同時に(ちょっと別詩っぽいかな?)のイメージがありました。付記すると、以前にもこういった印象を持ったことがありました。このあたり、少し調整力を頭の隅に留め置かれると良いと思います。
それは、さておき、この後半部分は意外と面白く、平家物語を引用していますが、その古典性や終連などが、かえって詩にPOPなフィーリングを与えているように思えました。「ダンス」という言葉の持つモダン性、軽快性も寄与しているでしょう。ちょっと別途的付随的感想にはなりますが。このかたは哲学性、宇宙的、SF的、etc。多様な面を持ちますが、POPな要素があっても面白そうです。無理強いではなく参考までに。 甘め佳作で。
3 相野零次さん 「恋とか愛とか」 3/20
おや、まあ!いろんなことが書かれてますねえ。話がずいぶん飛びますが、なかなか面白く読ませて頂きました。そんな中で、この詩の核になるのは「時間よ止まれ」と、お相手のこととキスのこと、のように思われます。病気の部分は何故出て来たか?はよくわかりません。
終連が結論であり、ホンネでしょう。僕が推測するのは、この人、今”恋とか愛とか“を実際にしていて、気が高ぶったり、気恥ずかしかったりして、テレ隠しに「テレ書く詩」して、あれこれ書いちゃった、そんな気がしてます。ある意味、微笑ましいのです。作品群のひとつのバリエーションとして見ています。 佳作一歩前で。
4 じじいじじいさん 「あたたかさ」 3/21
今の季節にふさわしい詩ですねえ。タイトル通り、詩の肌触りもあたたかいものです。
まず表記上の点でいくつか……。「空の青空」→「空の青」「育てて有難う」→「育ててくれて有難う」と、その下「有難うと言った」→「そう言った」それと、この主人公は女性と思われますが、あまり女性を感じさせない気がします。「~~だ」の表現と「~~ね」が混在しています。女性的フィーリングをもう少し入れたい。あとは現実に拘ることなく、車ではなく歩かせてもいいかもしれない。
以上、手を入れてみてください。
次にこの詩の考え方です。作者さんは主に子供の詩を書いてきました。多くのお子さんが書いたことでしょう。その中の任意の一人の女性。じじいじじいさんと共に詩を書いてきた。そして歳がたけ、大学卒業して社会に巣立つ。すでに大人の詩を書く彼女です。そんな風に来歴を思うと,感慨もひとしおです。この詩は再推敲が必要ですが、そんなことはどうでもいい。ささいなことです。
その背景を思って、調整を条件で甘め佳作とします。みなさんで、この女性の門出を祝いましょう。
5 荒木章太郎さん 「雨と鞭」 3/22
荒木さんのひとつの技術的アプローチは何だろう?と考えます。同じ発音の言葉で漢字の姿の違うもの、意味の姿の違うものを、時に主役に据え、時に脇役にまわして、詩の全体像、そのメッセージ性を伝えて行く一助にする、と僕は思って来ました。この詩にも、その条件は健在です。
このタイトルにしてからが、そうです。以下「裁き・捌く・砂漠」「鞭・無知」「掬い・救い」「裏切る・裏側」「憎しみの肉」など。そういった構図を通じて人や社会―この世界の法則性を探ってゆく。こういった手法でひとつの詩の意味を通していくのは並大抵なことではありません。それを楽々やってしまう荒木さんです。さて、詳細不明ながら、感じられる大意を。
「裁く」「鞭打つ」。このふたつをこの詩が持つ人間最大の試練とします。おそらく前半はこれらを額面通りの制裁と見ているようです。ただし、前半終わり近く「裁くためではない/救うために~」とあります。さらに(試練の意味を取り違えていた)とあります。詩の中で少し変化が起こっているようです。以降「無力な自己」「約束を守る」「人を信じて」「それでも信じて」「人はつながり」などの言葉が登場します。このような試練~人間の負の状況においての基本的考え方が自己の心理再生、人々との共生にシフトしてきたのを感じます。評価は「評のおわりに」で書きます。
6 晶子さん 「布」 3/22
この世での人と人との繋がり。この世とあの世を結ぶ繋がり。それは今を生きる人と故人との区別なく暖かな通路。その象徴としての「布」。そんな気持ちがあります。美しくもあり哀しくもある。
短い詩ですが、考えさせられることが豊かにあります。晶子さんが書くとねえ~、全てが優しく静かな方に流れて行きますね。そのあたりに皆伝のいわれがあると思います。評価は「評のおわりに」をお読みください。
7 ベルさん 「祈り」 3/23 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。
突然ですが、初連の4行目から読んで最後まで行きます。この詩の主人公単一の気持ちがよくわかる書き方です。4行目から、としたのは、冒頭3行は「誰が言ったのか?このセリフがこの詩にどう関与するか?」が見えてこないです。たとえば、2行目の「あなた」は5連に出て来る「君」と同一人物なのか?も焦点になりそうです。あとは、好きな人との再会を希求する詩として充分に伝わります。推敲を充分にして微調整すれば良いと思います。そういった意味も含めて、また別作品を書いてみてください。
評のおわりに。
今回の区間は二人の免許皆伝者を含んでいます。荒木章太郎さんと源田晶子さんです。
本編では評価を割愛しましたが、こちらに思いを綴りたいと思います。どちらも人生や社会を、遠景・近景で、それぞれに伝えて秀作の誉れ。
一人は抽象的、一人は抒情的。そのアプローチの違いが個性であり、詩の妙味とするところ。どちらも詩が必要とするところ。その伝えるところの深さは皆伝作に相応しい。お二人の個性は僕にとって、とても有益で嬉しいものでありました。 ありがとうございました。 これからも期待しております。 では、また。