ナツノカゲ おおたにあかり
ざぱん
何の音?
波の音
じゅじゅうじゅう
これは言うまでもなく
肉が焦げていく音よ
太陽に背を向けながらも
にらめっこした
遠ざかったままの歓声に
手を振るだけの
一日がすぎて
麦わら帽子を脱ぎ
立ち上がる
女の子が
ひと夏をあっさり
またいで飛び越える
ざぁざぁざざざざざざ
雨は急に降り出して
「ゲリラだね」
誰かが言う前に
振り返る女の子が先に言う
「急な雨はいつものこと」
夏は行ってしまう
行ってしまっていた
他の季節と同じ
挨拶はしないまま
そして
さっきまで隣りにいた少女も
もうどこにも
いない