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スレッドNo.7076

反面教師  上原有栖

流れる川
柳の下に
どじょうはもう居ない

一匹捕まえて喜んでいた作家は
まずい酒に溺れて
首が回らなくなったのか
一昨日とうとう夜逃げした
郵便受けからはみ出していたのは
督促状の束

***

━━━━━「俺みたいに、なるなよ」━━━━━
これが、作家の口癖だった
寝癖がついた髪は
いつも明後日の方向に跳ねていて
目の端には目脂(めやに)が付いている
顔くらい洗えばいいのにと思っていた

***

部屋はからっぽだった
大家が片付けたのかもしれない
室内は乾いていて殺風景で
寒かった
一昨日まで人が暮らしていたはずなのに

ベランダには水槽がひとつあった
捕まえたどじょうを飼っていたのか
髭をヒクつかせ泳ぐ
一人ぼっちの魚を想った

***

━━━━━「お前は、うなぎになれ」━━━━━
作家にそう言われたことがある
あなたに言われなくとも
言われなくとも、さ

柳の下に
二匹目のどじょうは居ない
十八回目の春がやってくるまでもう少し
僕の旅立ちは、近い

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