メッセンジャー Ema
非常階段を下りていくと
さくらの枝と目線があう
起きているんでしょう?
雛人形を片付けても
冬芽は
固く固く
口をつぐんだまま
枝とおんなじ顔をして
たぬき寝入り
冴返る空
暫く音沙汰のなかった
雨からのたよりがとどく
「冬と
さよならしましょう」
ひとつ ふたつ みっつと
たよりを重ねて
頑なだった花芽も
ひと雨ごとに
まあるくふくらんで
ひとつ またひとつと
口もとがほころびはじめる
ずっと
雨を待っていたんだね。
白い空
ほのかに青みをおびて
非常階段の踊り場
かすかに紅みをふくんだ
白い花びらが螺旋を描く
見下ろすと
花散らしの風に揺れ
咲きこぼれる夢見草
見蕩れてしまうね。
あの舞の中に足を踏み入れたら
もう
戻ってこられないかもしれない
人がその心地に
歩みを止めてしまわぬよう
雨風が
季節をはこんでゆく