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スレッドNo.7096

四月の微熱  ゆづは

二度目の定年退職だ、と
誇らしげに笑って
大きな花束を抱え
あなたは帰ってきた

私は まだベッドの中で
言葉のことばかり考えている
積まれた家事に触れず
抜け切らない微熱に
浸ったまま

このぬるい滞りは心地よく
朝と夜はいつしか裏返り
私はただ 言葉の澱を 
掬っては捨てる

重たい身体をようやく起こし
花束をほどいて
長すぎるチューリップの茎を
一本ずつ パチン、と 落とす

乾いた音が
夜の静寂を か細く裂いた  

四月
あなたはまた 
新しい靴紐を結ぶ

瑞々しく生けられた花だけが
私の代わりに
あなたの背中を
見送っている

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