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スレッドNo.719

本を読む  秋冬

いつもの
単行本を
手にして
家を出る

地下鉄の
ベンチで
付箋だらけ
赤線だらけの
物語を開く

目の前を
人が
行き来する方が
一人に
なれるのだ

何度読んでも
懐かしく
何度読んでも
新しい


隣りに
座った
少女が
紫のハンカチを
差し出す


僕が
思い描いた
主人公だ

この世に
現れた
のか

僕が
本の世界に
入り込んだ
のか

どちらなのか
分からないが
とにかく
涙が止まらない

 いつも
 ありがとう

ハンカチを
受け取ると
少女は
優しく笑んで
うっすらと
消えて行く

しかし
手にした
紫のハンカチは
消えない


僕が
残された世界は
どちらなのだろう

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