過去形 上原有栖
あの日
くちに溢れた言葉の響きを
いまでも噛みしめている
味の抜けたガムに似ている
はやく捨てればいいのに
なくなってしまうと
口の中が途端に寂しくなるから
いつまでも舌の上で転がしている
あの日
伝えたいことは
全部吐き出したつもりだった
それなのにまだ
喉の奥に引っ掛かる 棘
まだ傷つくことを知らなかった
幼いわたしが耳元で
ちいさく囁く
過去を形にして
良かったことも
悪かったことも
全部 心に遺して
隣に積み上げていくの
少しくらい傾いていても
端がシミで汚れていても
気にしないでいいから
わたしの背丈を越えていけ