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スレッドNo.7268

消えた沈黙  石川ぼうず

ある朝
目が覚めると
世界は狭くなった

会社
海辺
深夜の遊園地
知らない国の路地裏

思い浮かべるだけで
どこへでも飛んでいける

僕は瞬間移動の技を身に付けたのだ

初めはただ楽しかった
どこに行くにも時間がかからず気楽だ
なんせ遅刻ギリギリまで寝ていられる
しかし 能力を使うことに慣れてくると
しだいに 待つことができなくなっていく

料理が運ばれてくる時間
返信を待つやり取り
長い長い信号待ち

苛立つ

五分の遅刻が
永遠みたいに思える

コンビニのレジ
動画の流れる速度

数秒でさえ
耐えられない

待つことが
馬鹿らしく思える

僕は待つことをやめ
どんどん効率を重視した

距離を消し
待ち時間を消し
面倒を消し
沈黙を消した

ある夜 恋人と
ゆっくり過ごしているとき
僕の意識とは別に
どこかへ飛ばされてしまった

静かすぎる空間
誰もいない
ただただ 真っ白な世界

そこで初めて気づく

僕はすごい能力を手に入れたが
結果 誰とも一緒にいられなくなっていた

狭くなっていたのは
僕の世界観だったようだ

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