真面目な二人 秋冬
三角と四角のどちらが好きかと聞かれて、そんなこと考えたことがないので黙り込むと、真面目なんだねと笑われる。君はいつも、真面目なんだねと言いたくて、僕に質問する。もしも、三角と答えたら、すかさず、どうして? と質問を重ねるだろう。なんとなく、とか、理由なんてないと開き直れない僕は、また黙り込むから、やっぱり真面目なんだね、と行きつく先は決まっているのだ。
僕は冗談も言えないし、愛想笑いもできないつまらない男だと自分を思ってきたけれど、君に出会ってから、つまらないから真面目に分類されるようになった。最初は馬鹿にされているのだと思っていたが、どうやら君は、本当に僕の真面目なところを評価してくれていると知り、このままでいいのだと初めて安心した。僕が、三角と四角のどちらが好きかと聞けば、そんなこと考えたことないから分からない、そんなこと考えるなんて真面目なんだね、と君は笑うだろう。とても嬉しそうに、とても楽しそうに。
先日、僕が不真面目になると宣言したら、不真面目な人はそんな宣言をしなくても不真面目で、不真面目になることを真面目に考える時点で真面目なのだと笑われた。真面目になると私が宣言したら、なんて不真面目な宣言なんだとみんなから笑われる、と大きく笑う。僕は君の笑顔が見たくて、精一杯の冗談を言ったつもりなのだけれど、伝わっただろうか? 伝わらなくても、君が朝から笑ってくれたから十分だ。
禁酒日だった昨晩、夕食後に素面で「結婚して下さい」とプロポーズしたら、真面目なんだねと笑わずに、ありがとうと泣いた。もらい泣きを我慢して、あんがい真面目なんだね、とハンカチを渡したら、あなたには敵わないけど私も真面目なの、と恥ずかしそうに笑った。今までで一番の笑顔だった。