気象庁の梅雨入り宣言 石川ぼうず
気象庁の奥のさらに奥
案内板にも載らないフロアに
梅雨部はある
梅雨部の会議は短い
「そろそろですね」
「水不足も気になりますし」
「加湿器の水もそこそこ溜まりましたから」
誰も反対しない
視線だけが静かにうなずく
若手が窓を少し開け
ベテランが湿度計をにらむ
課長が水のたまった
加湿器の取っ手をひねる
部長は黙って曇った眼鏡を拭く
皆が自分の仕事に集中する
誰も梅雨部のことは知らない
それでいい
彼らの仕事は気づかれないこと
翌朝ニュースは伝える
「今年も梅雨入りです」
街中の女子高生が言う
「梅雨入りだって」
「マジ うざ」