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スレッドNo.73

5月31日から6月2日までのご投稿分の感想と評です 夏生

大変お待たせ致しました。
5月31日から6月2日ご投稿分の感想と評です



「幻想」 プラネタリウムさん  

プラネタリウムさん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作品「幻想」の評を書かせて頂きます。
幻想的な現実をゆっくり楽しんでいるように感じました。
眠ることを「繰り返される死の練習に身を投じる」という表現は
核心をついたような鋭さがあり、印象に強く残りました。
「幻想」というタイトルですと、いろいろ書きたくなってしまう。
書きすぎてしまうところですが、短い文章で読者を惹き付ける力がありますね。
プラネタリウムさんの表現力の高さを感じました。
詩集を出すときに巻頭にのせてほしい思う、魅力ある一篇でした。
御作を佳作とさせていただきます。



「午後のやさしさ」 南 ほたるさん

南 ほたるさん、はじめまして! 
ご投稿くださりありがとうございます!
今回は初めての方なので感想のみとさせていただきます。
ご了承くださいませ

僭越ながら御作「午後のやさしさ」の感想を送らせていただきます。
「あなたがいなくなっても 世界はちっとも変わらなかった」
愛する人との別れについての実感。
「分かっているのに またね と言った 私たちをほめてあげよう」
本当に別れたくないから、失いたくないから、どんなに不可能であっても
つなぎたいと願う気持ちの表れを感じる「またね」が切なく響きます。
愛する人を失ったかなしみの中でも動く日常が「ブラウス」であり、「やさしく広がる空」と「冷たい床に寝ころぶ」「私」であって。
「あなたの不在がしんと積もる」ことも日常となっている。
「永い待ちぼうけ」に、慣れたわけでも受け入れたわけでもないような、ただ現実として起きていることを見て、感じている。
「永遠のまちぼうけ 待っているのは あなたの方か」で、はっとしました。
「あなたの方」の視点がある。思いがある。読み手は一瞬そこに意識を向けます。
ぼんやり光るかわいたブラウスを見ているのは二人のような、不思議と合わさった視線を感じました。
かなしみ、切なさがやさしくしみる一篇でした。



「フィドル」 妻咲邦香さん

妻咲邦香さん、はじめまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
今回は初めての方なので感想のみとさせていただきます。
ご了承くださいませ

僭越ながら御作「フィドル」の感想を送らせて頂きます。
「なり損ねたものがあるなら 駅の売店でアイスでも何でも買って」のところは
自分自身を励ますような、慰めるような感じがあります。
「なり損ねたもの」が何なのか、想像しながら読み進めます。
景色が輝いて見えるのは目に涙を浮かべていたからでしょうか。
「ああ、その駅までは その駅に着くまでは こうしていようかなと 思ったけど
思っただけで」と
車窓の風景が過ぎていく早さと同じくらいの早さで主人公の心が変わっていきます。
止まってくれない、止まれないことを受け入れながらどこかさみしげな眼差し。
弾くことが叶わなかった歌、という表現は見事で美しく、腑に落ちる表現でした。

「私、流れてる、きっと」と言葉を区切るところに臨場感を感じ、「貴方のいるその場所からは 止まって見えるんだよね きっと」と問いかけるところに主人公の背景がうっすらと見えます。ここで読み手は主人公と「貴方」の関係性や出来事を想像します。
主人公がどこへ向かっているのかも。

「運ばれながらもまばたき一つで 今日は何度も世界を終わらせたから
形を与えられなかったものは残らず消えて 私もそうなりたかったけど なれていたかもしれないけど」
その答えを知ることは出来ない切なさが余韻として残りました。
何かははっきり描かれないところを想像させる、詩の醍醐味のある一篇でした。



「通夜にて」 秋冬さん

秋冬さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「通夜にて」の評を書かせて頂きます。

亡くなった人の悪口は言ってはいけない、なんて、常識のように言われていますが
亡くなったら誰もが良い人になってしまう違和感ってありますよね。
「死んだら みんな いい奴になるんだよ」の言葉に「そんなに都合のいいこと
あるわけないじゃん」と主人公は思います。読み手も同感です。
都合よく解釈して簡単にまとめるな、という怒りも感じます。
主人公は「俺が死んだ時に いい奴だった なんて言う奴がいたら 生き返って 頭をぶん殴ってやる」と正直な気持ちを表しています。
主人公は故人に対して「迷惑をかけられまくって 文句を言いに来たけど」と
不満不服を抱いています。不穏です。展開が気になります。
具体的な出来事は描かれていませんが、「いい奴だった なんて言う奴がいたら~」から
「きっと あいつもそう思っているはずだから」で、故人と主人公の心の深い繋がりを感じさせます。その後の「いい奴だった なんて言わずに 思う存分 文句を言ってやらないか?」の言葉の裏を感じる、誰よりも故人のことを思う心が感じられてぐっと来ました。

言い返せなくても構うものか、と言いながら「悔しければ 生き返るかもしれないし」と
冗談というより本気で期待する勢いがあります。
「本当に死んでしまったのだとしても いい奴だった なんて言われたら 安心して逝けないだろう?」主人公にしかわからない故人の心や思いを汲んでいるように感じました。
友を亡くした人のかなしいお話、良いお話の展開にしない。主人公の正直な気持ちを吐露することで読み手に親近感を与えて、惹きつけていく力のある一篇でした。
御作、秀作とさせていただきます。



「永遠の問い」 長森正樹さん 

長森さんはじめまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
今回は初めての方なので、感想のみとさせていただきます。
ご了承ください。

僭越ながら御作「永遠の問い」の感想を送らせていただきます。
「君は 何処から来て 何処へ 行ったのか」の問いかけではじまり
「ヨシキ」が遺したものや匂いに思いを巡らせます。
骨壺の中が全部ではない、と想像を膨らませて宇宙まで広がります。
「分子レベルとなって この大気の中に 海の中に 土の中に 必ず ある筈だ」と
現実的な解釈のようで、そうであって欲しいという願いのようにも感じられます。

9連目はさらに思いが深く、「私の血の中に 肉の中に 骨の中に 心の中にまで 」と
「君」は消えたのではなく形を変えて存在していると信じています。
「皆と語らい 微笑んでいた その君は 今は 何処にいるのか」
問いかけずにはいられない、こみあげた気持ちとかなしみだけでは留まらない思いを
強く感じる一篇でした。

 

「クリームソーダ」 秋さやかさん

「恋って パチパチするっけ? ふわふわするっけ?」
恋を擬音で表す面白さ、感性の豊かさを感じます。
そこからイメージも出来て、なんだか楽しい気分になります。
親御さんの「うーん どっちもかな」の答えもいいですね。
こどもに対して曖昧な返事をしない。ちょっと考えてわかりやすい答えを出す。
会話が弾みます。
親御さんは「いつかあなたが そんな恋をしたら 」と
娘さんの未来を想像します。
クリームソーダの鮮やかな色と甘くてちょっと刺激的な味が娘さんが
後に経験する、かもしれない恋を予感させます。
「クリームソーダの さくらんぼ 今度は私にちょうだいね」
は、パチパチしてふわふわな恋をする未来の娘さんの姿を楽しく想像する
親御さん。さわやか愛情を感じます。
かけがえのない時間を過ごす親子に懐かしさを感じる一篇でした。

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